国民が健康かどうかを図る指標というと適切なものは余り無い。健康によるQOLの有様は各人各様であり、どれがベストというのはない。ましてや定量的な数字に直すとなるとお手上げであろう。その健康をどう公共医療がサポートしているかをアマチュア的に調べるのが本論の目的である。したがって、詳細な情報や深い分析は期待しないで気軽にお読みいただきたい。
「健康」の指標は強いていえば、平均寿命が代替にはなるであろう。これには二種あるようだ。「平均寿命」すなわち生まれてからの期待寿命と「健康寿命」どれだけ自立して生活していられるかの期待値だ。すなわち「出生時の健康余命」である。これらの寿命統計で各国の健康と医療制度を見てみる。
世界の医療統計の情報分析を統計局データ(2007年)に基づき、行ってみよう。
このサイトには世界各国の「医療費支出」が「対GDP比率%」「公的医療費比率%」「1人当たり医療費$」の三項目でまとめられている。2007年のWHO統計である。意味は医療費がGDPに占める割合、公的な社会保障(国民保険等の支払い)が医療費に占める割合、それに一人あたりの医療費である。
医療サービスの人的・量的情報として、「千人当り医師数」「千人当り看護師数」「千人当り病床数」もあるので、これら6種がどのように「国民の健康」に影響するかを粗っぽく、検証してみよう。
同じサイトに平均寿命も記載されている。ここでは前述の二種を「健康」の指標としてとる。「男女の平均寿命」と「男女の健康寿命」だ。
日本を含む49ヶ国で「相関係数」を計算する。*1
「1」に近ければ、相互の正の結びつきが強いのが、相関係数である。
平均寿命にも健康寿命にも相関が強いのは、「公的医療費比率%」であった。
とくに、健康寿命には大きな貢献となっているようだ。公的補助が大きければ、早いうちの治療が可能になるので健康に寄与していると仮定してもよいだろう。
次に効いているのは看護師数である。
これを図示した。
一番上方の白点は「日本」であり、平均寿命が高く、公的医療比率も高い水準にある。他国の点を含め全体的に見れば、右肩上がりとなっている。公的医療費比率がかなり高いのはノルウェイであるが、それほど平均寿命が高くない。
一人あたりの医療費を組み込んで、日本やアメリカ合衆国などがどのようなポジションになるかを検証してみよう。
バブルサイズが「1人当たり医療費$」であり、横軸が「公的医療費比率%」で、縦軸は「平均寿命」である。
医療の寿命延伸への経済的効率をまとめたと解してもらってよいであろう。
ということで、バブルチャートからの総括である。
・アメリカ人の平均寿命はキューバ並である。だがキューバ人の医療費はアメリカ人の1割以下である。ひょっとするとキューバ人の方が幸福なのではないか?
アメリカの亡命キューバ人はどう感じているか興味深いところだ。
・ノルウェイは医療費がアメリカ並みで公的助成も多いにも係わらず、平均寿命が伸び悩んでいる。健康寿命も66歳だ。アメリカ人は70歳。高度福祉社会の失敗ケースなのかもしれない。
・ノルウェイのお隣りバブルはフランスである。平均寿命は同じくらい。健康寿命も66歳であり、ノルウェ並みである。ぶどう酒の国の健康状態は芳しくはないようだ。
・日本は問題含みではあるが、他の先進諸国に比べても優れた医療経済的な効率性を保持している。健康寿命も76歳と最高水準である。病気の不安を感じれば即病院という小心翼翼な生活態度が貢献しているかもね。
ちなみに、お気の毒にもロシアはこれらの先進国のどこにもにも入りません。この統計によれば、平均寿命66歳、健康寿命60歳なのです。
*1:これら49の国々は統計情報が揃っているという基準で選択された。統計がまとめにない国は公共医療もそれなりのレベルでしかないと考える