ノーマンの『クリオの素顔』を読み直していたら新井白石の名が出てきた。ノーマンはカナダ人の歴史家であり、安藤昌益の研究でも有名である。『クリオの素顔』は気軽に読める日本の歴史散策という感じの名随筆だ。
彼の言うとおり明治以前の近代的な意味での歴史家は白石しかいない。
『読史余論』はまともな通史の試みだし、『折たく柴の記』は優れた自伝だ。『西洋紀聞』は東西文化交流とその対決の書である。
とくに『古史通』と『古史通或問』は神話と古代史への合理的な分析が光る。
近代歴史家に比べて彼の優位性はまったくないと思うなかれ。漢文を自在に読みこなした。史書を中心に木下順庵のもとで徹底的に学んだ俊才である。
おそらく近代の日本古代史家で白石ほど中国文献に精通している学者はいないのではなかろうか?
と白石をおだてておいて、彼の邪馬台国の比定地についての議論を再評価しておきたい。彼は、邪馬台国大和説を最初は唱えた。其の後、九州説に傾いているのだ。
もっとも卑弥呼と神功皇后を同定するなど昔からの俗説に無意識に賛同しているのではあるけれど。記紀と魏志は矛盾しているとも考えていたようだ。
卑弥呼が記紀にその存在の片鱗を示しているかどうかは、大きな論点だろう。
- 作者: 新井白石,松村明
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1999/12/16
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けれども、彼の『古史通』と『古史通或問』は図書館にでも行かないと読めないのは残念だ。
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新井白石 全集第三巻 pdf