サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

今和次郎とゴールトン

 今和次郎というと「考現学」の始祖になろう。日常生活を観察する、現代社会を記録する、そのことに血道をあげた。都市風俗の研究の開祖ともいわれる。
路傍の雨樋や井戸、洗濯物干しなどを克明に写生している。道行く人達の服装などのログをとっている。ライフログのはしりというのとは違う。
 マスオブザベーションという社会研究グループが1930年代にイギリスにも存在していた。ほぼ同時期ですね。こちらは社会人類学的なスタンスであります。
 そのハシリはフランシス・ゴールトンではないかというのが、ここでの思いつきです。彼は記録狂でもありました。スコットランドの歩兵の身長、道行く女性で美人の割合とか、容貌の美醜を決める要素の追求とか、生物的な視点ではあるけれどデータをコレクションしています。その数理面の後継者で完成者がカール・ピアソンということになります。
 今和次郎は形態学で終始していますが、科学先進国の英国では統計学に収斂してゆくのです。それが統計科学となり社会科学の王道になった。それにひきかえ考現学はどうも好事家の蒐集でしぼんでゆくんですね。時代の貴重な記録ではありますが。

 ところがこのようなデータ収集狂はアメリカにも出現しています。アルフレッド・コールズです。彼は大新聞社オーナの御曹司であり、アマチュアのデータ収集家でもありました。そのノートはありとあらゆるデータで埋め尽くされていました。
この御曹司は1929年の大恐慌の後、コールズ経済研究委員会を設置します。
 それは計量経済学に結びついてゆきます。またしても考現学の結末と異なるのですねえ。

参考文献

考現学入門 (ちくま文庫)

考現学入門 (ちくま文庫)

統計学を拓いた異才たち(日経ビジネス人文庫)

統計学を拓いた異才たち(日経ビジネス人文庫)