1970年頃までの人類の未来像はどちらかというとバラ色とブルーが入り混じったものだった。バラ色というのは科学技術の発展が限りなく続き、空間的な制約を突破して太陽系を制覇するような極端な信頼感をテクノロジーに抱き、その一方で核戦争の悪夢はいつ訪れても不思議ではないという憂鬱を振り切れないでいた。
世紀末の頃から、地球環境問題というのが色濃く漂い始める。21世紀になると、おおむね、温暖化による気候変動に集約してきている。
一方で、政治的軍事的対立は背景に去り、経済成長とエネルギー・水・食糧のせめぎ合いが脚光を浴びるようになる。
それと人口問題は二つに分かれる。新興国/中進国の人口爆発と先進国の少子高齢化だ。
それも経済成長という視点での評価だけがひとり歩きしている。それは『100年予測』や『米国国家情報会議編 2030年世界はこう変わる』でも同一だ。
地球温暖化も人口問題も、何かにつけて経済成長率に置き換えて、その影響が論じられているのだ。これは社会主義体制が総崩れとなり、グローバル資本主義支配による思考の洗脳によるものだろう。
未来予測は経済成長だけで語られるのだ。
地球温暖化の持続は不可避であるが、それすらも経済への悪影響としてのみ語られる。
ところで、経済が人類を語り尽くす唯一の概念なのだろうか?
人口学的未来論のポール・ウォーレス『人口ピラミッドがひっくり返るとき』が典型なのだが、どれもこれも消費者の数がすべての未来を決めていると見なしている。
「社会」というものは多くの要素でできている。犯罪や宗教、教育や医療、昆虫採取や石ころ集め、化粧やポトラッチ、腕立て伏せやスクワット、写生や詩吟などだ。
人びとが、みな、ボランティアに打ちこんだら、経済活動はゼロになるのだ。計量化できない活動はすべて無視されるのが、経済というものだ。
別の言い方をしてみよう。
カッシーニがフランスの精密な地図を製作し、ルイ十四世に献上した時、太陽王は何と言ったか、だ。
「なんと余の領土は狭いことか」
国の境界を知ることにより領地が狭く感じる。ところが知らなくても領地はあるし、保全できている。むしろ、知らないほうが無駄な領地問題や隣国との係争は避けられる。
経済統計で全体を知るまでもなく、ある活動は存在している。計量化できないと知ったことにはならないというのが、科学者の暴言なのだが、経済統計もその一つなのかもしれない。
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覇権国家アメリカが凋落する。中国の台頭は一時的。日本が一番不安という指摘。
2030年 世界はこう変わる アメリカ情報機関が分析した「17年後の未来」
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