興味深くかつ切実な事実として、先進国の失業率は基本的に上昇基調にあるという経済学者たちの発見がある。
失業一般の原因をまとめておくと
1)個人の就活と企業の仕事口とのマッチングに時間がかかる
2)賃金の硬直性。労働人口が余ればサラリーを下げると吊り合うのが原則だが、働き手がそうしたがらない
最低賃金制に経済学者の一部が反対するのは2)の理由からだ。だが、そんな単純なハナシなのだろうか? 月給25万の営業2人が必要な会社を考えよう。世の中の営業の平均月給が20万に下がったからとて、その社員二人を20万にしたところで、その残余分10万でもう一人雇用できるとは思えない。
(因みに、自分は経済学の万能性は大いに疑問視している自遊人を自認する)
さて、どうして先進国で上昇基調にあるかというと1)が大きな要因だという見解がある。先進国では成長分野の業界が入れ替わる、同じ企業でもそうだ。テレビが不調だからデジカメ部門にシフトだというようなケースだ。だが、それに労働側が十分追随していけないと失業率が上がる。
そうだとしても十分な説明ではないであろう。
やがては労働者側も成長分野に自分の売り込みを図るし、スキルをマッチさせるだろうから。だから失業率は下がることもあるだろう。これでは長期的に失業率上昇の理由にはならない。
アメリカの失業率のグラフを掲げる。緩やかに増大しているのがわかる。
直近の数字で、8%台であり相当高い。現在のオバマ政権の課題の一つだ。その証拠に、ウォール街が失業統計に一喜一憂している。
経済学の教科書で有名な経済学者マンキューは石油価格との関連性を指摘している。
アメリカの石油価格と重ねわせてみよう。赤線が石油価格の推移だ。
1980年と90年の失業は石油価格の上昇後に起きているように見える。石油価格変動によりエネルギー消費型の業界はダメージを受ける。そうでない産業(Webビジネスなど)が伸びるのだ。
2010年にも同様なことが起きた。リーマンショックとも関係するのは言うまでもないが、石油も2008年に跳ね上がり自動車業界はボロボロになった。
他国はどうであろうか?
新興国というのもなんだが、やはり新興国の中国の失業率は4%台だ。その経歴は下図となる。
EUにおいて、ドイツは景気が良い。一番の先進国だ。それでも、2009年時点で7.7%である。
実は失業率問題のなかでも一番、深刻な問題が先進国共通に存在する。若年層の失業率の高さだ。
若年層がどうして割を食うのかについては諸説ある。
先進国で労賃の安い単純業務は工場の肉体作業であろうが事務所のデスクワークであろうが、人件費のより安価な新興国に外出しされてしまう。情報通信の高度化でどこでも誰でも単純な仕事ができるのだ。
若者は仕事口を失い、職務経験を蓄積する機会までもなくなる。企業はどこでも使える人材や即戦力を求める傾向が強まる。そのため、「グローバル人材化」と称して安価で有能な人材をオープンマーケットから求人するようになる。
こうなると先進国の大多数の若年層は競争不利な状態に押し込められるようになる。
「フラット化」とトマス・フリードマンが予告した事態が、若年層を直撃するわけだ。
しかも石油価格上昇などの業界変動を起こすイベントのあとに、若年層へのしわ寄せがやってくると経験則が教えている。
日本では「英語力が大事だ」などというが、欧米の若者層がシビアにダメージを受けていることからすれば、語学力やグローバルで使える人材なとというより、もっと根源的な脅威に日本を含む先進諸国の若者層が曝されているのは、確かなことだ。
安くて士気と能力が高い他国の人材と戦うことになるのだ。多数の求職者が限られた就職口に殺到するようになったということなのだ。
なんとかその状況を一変させる手段を考えなければならない。若年層の職の機会の喪失はあらゆる年齢層にダメージを与えるのだ。
価値観を転換するようななにか抜本的なことを実行せねば...
- 作者: トーマス・フリードマン
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