前三世紀ごろから紀元一世紀までに、ギリシア文明に「小説」の始祖というべき物語群が生まれた。これらがヨーロッパ近代文学に流れ込んでゆくことになる。
現在までほぼ完全に伝承されているのは以下の五つである。
1)カリトーン『カイレアースとカリロエーの物語』紀元一世紀前後。
2)クセノフォーン『エフェソス物語、あるいは、アンテイアとハプロコメースの物語』二世紀中葉。
3)ロンゴス『ダフニスとクロエー』二世紀後半―三世紀前半。
4)アキレース・タティオス『レウキッペーとクレイトフオーン』二世紀後半。
5)ヘーリオドーロス『エチオピア物語、あるいは、テアゲネースとカリクレイアの物語』
この中でもっとも有名なのが『ダフニスとクロエー』である。エーゲ海レスボス島の豊かな自然を舞台にした至純な恋物語というものだ。三島由紀夫の『潮騒』の原点といってもよいだろう。
美青年のダフニスと美女のクロエはそれぞれ山羊飼いと羊飼いの拾われ子である。しかし、二人は高貴の血筋を引いていたことが物語りの結末であきらかになり、大団円となる。
ロンゴスの小説をもとに牧歌的な恋愛小説というジャンルが西洋に花開くわけである。
実は松平千秋などの専門家によれば、『エチオピア物語、あるいは、テアゲネースとカリクレイアの物語』がもっとも雄大でよく出来た長編小説とのことであるが、翻訳はされていない。残念だ。京都大学出版会の西洋古典叢書に期待しよう。
ラベルの原曲をデュトワの指揮で聴きながら小説を読んで見るのも悪くはない。
ほんと!色彩豊かなで流れるようなメロディなのね。
レスボス島のMytilene(古名ミュティレーネー)の近所で物語りが進む。この島はいまはトルコ領だ。
小説は入手困難なのかもしれない。
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なのに、ラヴェルの作品は買える。
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