サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

破滅のロングテール

 シナリオだけものしておこう。

始めに、人の死因を論じる。それから種の絶滅を比較する。種の絶滅と同様に文化や宗教の消滅を概観してもよい。

 そこでの教訓の仮説はトルストイアンナ・カレーニナの序言から、

「幸福な家庭は似通っているが不幸な家庭はそれぞれである」に拠る。

つまり、死滅の要因はそれぞれ個別的だろうということだ。

人類の破滅の要因もそれと通じていることを論じる。

 全面的核戦争だとか、パンデミックだとか、大型隕石の落下、磁気嵐による通信施設の不可逆的ダメージとか、一つの要因に絞り込めないとする立場を説明する。

 試しに、John Garrickの『超巨大リスクの定量的評価』をひも解いてみよう。

 文明に一大ダメージを与えかねないハザードを「カタストロフィック」な事象としている。そのリストは下記のようなものだ。

 核戦争

 超巨大火山

 オゾン層破壊

 世界の水資源管理

 化石燃料による汚染

 感染症パンデミック

 種の絶滅 熱帯雨林

 種の絶滅 サンゴ礁

 巨大津波

 遺伝子工学と合成生物学

 地球温暖化

 超巨大地震

 産業事故

 ナノテクノロジー

 人口管理

他の識者が危機感を表明している事象が並んでいる。「バイオテロ」やサイバー攻撃によるインフラの恒久的ダメージなどがないが、著者は網羅的であることは主張していないのは注意しておこう。共通点は何かというと定量的に扱えるということらしい。

 これらは単一イベントで起きて、それらが連鎖するということは考慮されていない。

それに戦争に関しては「核戦争」がいい例だ。ウクライナ戦争のような局所戦争がやがてとめどなく連鎖反応する可能性は気になる。

 いずれにせよ、予測可能な単一事象で人類の破滅は起きないことを主張したい。

 その例がローマ帝国の滅亡だ。これは通常、西ローマ帝国の滅亡(乗っ取りの)ことを指す。東ローマ帝国埒外にされる(それも変だけれども、西洋人の心情はそういうことなのだ)

 最初の人の死因で顕著なことは、事故の取り扱いだ。この括りでの死亡はまさにロングテールの先、しっぽの部分になる。回転扉に挟まったり、浴槽で滑ったり、交通事故や毒蛇にかまれたり、クマに襲われたり、落下物の直撃や爆発事故に巻き込まれたりする。

 蓄積された原因によるものではなく、巡り合わせが悪く偶然的な事件で起きる死をロングテールの尻尾に相当すると考えられる。そして、この比率は馬鹿にならない。

 アメリカでの事故死の割合は3割近いそうだが、これがロングテールの尻尾が馬鹿にならない統計的証拠の一つだ。

 そこで思い出すのは、クリス・アンダーソンのビッグ・ビジネスなのだろう。

ちょっとしか売れない商品はいまだにちょっとしか売れないが、膨大に種類がある全部を足せばビッグ・ビジネスだ。

 (生物)種の絶滅は見かけ上、シンプルだ。繁殖数が減少して、いつの間にやらどこにもいなくなっている。北米のリョコウバトのようにだ。

 その原因はおおむねニッチ戦略の失敗で一括りにされるらしい。生きる場所、食うもの、繁殖機会がなくなった。そんなドライな論点で生物学は言い切る。

 一律、生存数の減少を観察するだけなので、そうした生物学者の観点にはロングテールの出番はないようだ。

 それでは、国家や民族、文明といったものの破滅の要因はどの程度解明されており、統計的手法で扱えるのだろう?