サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

連星(binary star)がなければ始まらない

 宇宙において連星はかなり普通の状態らしい。注意点はいずれも恒星でなければ連星と呼べないこと。ガミラスイスカンダルは連星ではない。

 あの北極星は3重星で、リゲルやレグルスは二重星なのだそうだ。夜空の約半数の星は連星なのだそうである。

 中国SFではないが三体問題のてーまになるような三連星も多く観測されている。

それどころか、6連星まであるそうだ!カストルがそれだ。

 片方の星のなかを遊泳する連星もあるというから、宇宙は広い。

 

 また、二の星からなる連星はbinary starという。なんか、いい感じ!

なぜなら、最近のブログ「剰余(バイナリ)適用小数点表現に対する実験」を書いたからというのもあるが、『銀河英雄伝説』のOPがbinary starだったからだ。


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 元ネタはこの本。意外な事実に満ち溢れた本、そして、宇宙。

 

 

諏訪湖 中央構造線とフォッサマグナの交差

 諏訪湖は地元の人びとが語るように「日本のヘソ」、つまり、中心点だ。

  なぜなら、中央構造線糸魚川-静岡構造線(ファオッサマグナ)の交差上に位置しているからだ。

 思い起こすのはギリシアデルフォイだ。そこにはアポロンの神殿があって、古代ギリシア世界の中心地とされた。その場所に喩えれば、諏訪湖は日本のオンファロスだ。そうここでは示唆しておく。オンファロスとはヘソのギリシア語だ。

 諏訪大社があり、かつては「御神渡り」という氷の割れ目が見ものであった。上社と下社を行幸すると人びとは信じている。

 隠れたる神のミシャグジは隠然たる勢力圏を中部地方に有していた。それと記紀神話に出てくる顕現せる神、建御名方命も興味深い。奴奈川姫という越の国の女神の子孫とされている。奴奈川姫は、これまた糸魚川地方の神なのだ。翡翠とかかわり合いがある縄文期からの女神であるとされる。

 諏訪湖は地質と神話の交差する要衝でもあるのだ。

 二大地質境界線が交わるというのは、聖地だという地質学的な証拠であろう。

 

 

信仰の最古層が生きる聖なる諏訪大社

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 この小説でも諏訪湖を含む中央地溝帯が列島を引き裂いていた。

 

旅人の憩い デイヴィッド・マッスン

そこは黙示的戦区であった

 これが忘れかけていた珠玉のSF名編の始まりの文。なるほど時間もののSFは映画やアニメなどあらゆるコンテンツに登場するようになった。『君の名は。』のようなロマンチックな名編もいいだろう。

 けれど、この『旅人の憩い』のように人生の深みが垣間見える作品もある。

本作品「戦士の憩い」と改題しても通るだろう。

 時間線が極に向かうにつれ収束する異世界の男の人生の長く、そして短い一コマを描いている。

 未知の敵と過酷な戦闘を繰り広げている前線から幸運にも解除となり任務から解放されたH。銃後の平和な家庭生活を築きあげた矢先、家族に別れを告げる猶予も与えられず同じ戦場に呼び戻される。それは現地時間で数十分に過ぎなかった...。

 これは人生ではままあることだ。

 仕事に明け暮れるビジネスマンは家庭での時間はあっという間に過ぎ去る。孝行する間もなく父母は先立ち、妻とはろくに会話もできず、子どもの成長にも深く関われない。家族それぞれに思いと別れを告げるいとまもなく、仕事がすべてを支配するという生き方。

 過酷な競争に身を挺して働き、自分自身でありえた時間はひどく短い。

そんなことを感じているあなたに読んでほしい現代の寓話が、『旅人の憩い』だ。

数十年前、SFマガジンの「時間SF特集」(1977年1月号)で初めて出会った。

 もう、こんな深いSFとの出会いは二度と体験できないだろうなあ。

 

 

 

 

環境問題の対策の有効性の検証はあるのかしらん

  今から70年前というと20世紀の真ん中あたりだが、そのころ日本でも公害とか大気汚染などがマスメディアを賑わすようになっていた。四日市ぜんそくとか、水俣病とかのホットだった年代だ。

 実は原因すら工場の排気ガスや廃水にあるとは確定されていなかった。そうなのだ。

 そうした地域性のある環境問題は次第に原因が特定され、規制が施行されてゆき、被害者補償も始まり、重大さは稀薄化していったようだ。例えば、クルマの排ガス規制なども強化されていった。

 日本という地域の局所性がなくなった。

 中国や韓国など他の工業国が肩代わりしたわけだろう。酸性雨オゾン層破壊もしばらく大きな問題であった。
 大気汚染にPM2.5を追加したのは最近だろう。
 ここ10年は地球温暖化がホットな話題といってはなんだが、ほぼ先進国共通の定着したテーマである。
 21世紀も20年が経過した。この時点での感想は、20世紀後半から、環境問題は地球上に拡散して巨大化した感がある
 つまり、環境問題への対策は実効性が少なく、後退と敗北の繰り返しであったように思える。根本的な解決や低減は進んでいないのだ。先進国の財政問題と同じで先送りだ。

 70年以上も経ちながら、こうした有り様である。なるほど、各国ではそれなりに環境対策は実施されてきてはいる。だが、切り札ではなかった。

 要するに、発生原因を地表にあまねく分散させることで人びとから問題を見えなくさせてきたようだ。

 レイチェル・カースンに代表される意識高い系の預言者たちは警告をだしてきてはいた。その社会的な応答はそれなりあったし、効果もあったのだろう。でも、この有り様である。どうして大気汚染やPM2.5や温暖化を逆転できないのか、その検証も必要なのであろう。
 70年をふり返って、その反省を踏まえて今後どうなるかといえば、「ダラダラ続くぬかるみ」が深まってゆく、そう指摘されても反論できない。

 今後、再び環境変動の地域性と激化が強まり、切迫感を持つようになる。

 例えば、現在進行中のカリフォルニアの長期干ばつのように、住民にも農作物にも打撃を与える。アメリカ人の娯楽ともいえる庭の芝。西海岸では芝にスプリンクラーで湯水のように散水する行為は消え去る運命だ。

 行く手に待ち構えることは間違いのないと残念ながらより厳しい自然環境からの反撃となろう。それは多くの人たちの実感ではないかなあ。
 自分も含めほぼすべての人類が目先の利益の追求に余念がなかっただからであろう。
グレタ嬢は例外かもしれないが、本当の唱道者、リーダーは不在だったということになろうか。

 

 

 

 マクニールの貴重なる研究。特定の先進国は環境劣化を抑え込むのに成功した、かのようにみえる。実現に成功した理由は、新興国に廃棄物や工場を転化するという手段だったようだ。

 

 

頭の硬いハードSFファンの嘆き

 先進国、とくにアメリカの停滞が典型的なのだが、その科学技術の現状は嘆かわしいという往年のハードSFファンは多い。自分が真っ先にそうだ。

 だいたい、AIや量子コンピュータやら5Gなど情報通信技術がやたらにもてはやされるのが疎ましい。しょせんは電子と光を制御しているに過ぎない。レプトン族の一番初歩的な素粒子をどうにかこうにか制御しているだけだとハードSFファンは指摘する。

ニュートリノ族の利用は微々たるものだ。それにハドロン族は置き去りに近い。

 ハドロンは物質のコアだ。大半の物質はハドロンが中心に構成される。でも固体物理学が把握しているのは原子レベルであることを、そして固体から放出される電子と光がその主要なアウトプットである。

 「銀河規模でみたなら21世紀の人類の科学技術はどれほど幼稚なことか!」

まさに頭の硬くて現実感がないハードSFファンが言いそうなことだ。

幼稚なのはまだしも、デジタル情報通信技術だけが肥大しているのは最近の傾向だ。

 どうもこの科学技術の進化の配分はおかしいと硬骨漢=頑固者のハードSFファンは疑いだしている。医療、建築、海洋工学、宇宙開発、モビリティ、エネルギーはすべて遅れているか情報通信技術の依存性が高い。

 その結果は格差病理社会への傾斜だ。どの国もそうなりつつある。COVIT19はそれをさらに悪化させた。情報通信技術はスモールイズビューティフルの流れでもあった。

 だが、塵もつもれば山となる。スモールであることはスマホに体現されている。しかしまた、スマホは格差病理社会の典型的デバイスだ。人が情報を支配すると見せかけ、情報により人が支配される制御端末。ノーフリーランチを絵にかいたようなものだ。

 ひとつの格差拡大のストーリーを示そう。ウォルマートという巨大流通チェーンはアメリカ人に格安商品を販売した。人びとはその安さと品質と種類の多さに幻惑された。

 ウォルマートはアマゾンほどではないがITを駆使して格安さと消費者取り込みの成功例となった。昔ばなしだがそれは拡大再生産されている。

 その結果はアメリカの弱小製造業の一掃と中国の台頭だ。多くの実のある職場はアメリカ本土から消え去り、ブルシットジョブが大量に生みだされた。中国も例外ではない。

 先進国は似たり寄ったりの苦境におちこむ。一握りのエクセレントな仕事と大量のむなしい仕事というのが労働者に提供された状況なのだ。

 自分もそうだが、夢想家であるハードSFファンは時空をまたにかけるような職場がやがては到来すると望んでいた。かわりに到来したのはウーバーイーツだったわけだ。

 ハードSFの描く華麗な科学技術の世界はやってこずに、科学技術がもたらしたのは生きるにハードでブルシットジョブがあふれた世界となったわけだ。

 

 

 

 アメリカの若者の苦境はこちらでも語られている。

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深層学習についての生煮え仮説メモ

 あまり人気のない問い。それはAIが人間に理解可能か、あるいは人間のように考えることができるのか、という問いだ。もちろんチューリングテストなる一つの合格基準がある。

 だが、サールの中国人の部屋のような問いかけにはチューリングテストは十分とはいえないと感じる。

 ここで自分が信じる仮説は「AIは決して人間に理解可能とはならない」あるいは「人間と同じような意識を持つことはない」ということだ。

 いかなる専門家でもない自分が拠って立つのは神経生理学や一部のハードSF、科学哲学などだ。

 AIの典型技術として深層学習をとりあげよう。これは神経網、大脳の神経網を模倣したものだ。今では1000階層でノードが数万以上という大規模なネットワークが出現している。量的な規模が人の大脳にだんだん近づいている。

 AI研究者たちはAIはもはや大脳の模倣ではない、別物だと主張している。しかし物理的な模倣であることはその始点においては確かだった。それに物理的な模倣orモデルでないなら、人間の意識の模倣もできないのではないか?

 この神経網の模倣は電気的な模倣でしかない。シグモイド関数のような深層学習のノードの反応・無反応を決める方式は、神経細胞のホジキン=ハックスレイ方程式の単純化でしかない。別にそれはかまわない。電気的な反応が意識のふるまいを決めているならば、だ。

 しかるに神経生理学が明らかにしているように、電気化学的&生化学的な振る舞いが神経細胞に具備されている。

 深層学習は、知覚能力の模倣にすぐれている。画像認識や音声認識などだ。外界のシグナルを分類し予測することができる。それはInputがあってのことである。

Input-procee-output ,  この図式から深層学習は永遠に抜け出せないというのが、最初の主張だ。なぜなら、神経網の電気的な信号処理の模倣だからであり、信号処理の延長をAI技術は扱っているからだ。

 欠如しているのは化学だ。生化学や電気化学だ。イオンチャンネルや能動輸送だ。神経細胞の生理や化学反応のようなウェットなモデルはコンピュータの苦手とするところだ。細胞自体の物質的な維持に加えてイオン濃度やエネルギー供給が神経網を支えている。

 こうした物質的基盤を維持するために神経網は活動している。己の活動を維持するために外界認識などを遂行しているのだ。つまり、それが欲望の根源なのだろいうというのが第二の主張だ。

 観念論哲学者シェリングを唐突に援用するなれば、人間存在の底には欲望がある。何ものかについて考えるのもその欲望に駆られてであろう。欲望は化学的であるといえないか?

 『デカルトの誤り』におけるダマシオの問いも同じことではないだろうか?

 

 下記の本を議論の下敷きにしている。背景は数学的関数主義だ。生理学的な模倣から程遠いAI理解こそが、その「意識」のモデル化という目標から乖離を明確にしてくれる。それにしても深層学習はオーバーフィッティングを免れているですねえ。

 

 自由についてのシェリングの思索をギリギリまで読み解いてゆくハイデガーの手腕には一驚するが、それが精神世界の在り方におおきなヒントを与えている。そう思えてならない。

 

 

 

 

 

コロナウイルスが加速した大国の人口の転換点

 アメリカと中国と2021年人口が公表されている。両方とも歴史的な数字となった。

昨年7月の数値でアメリカの人口増加率は0.1%だったというのがJETROの記事だ。

www.jetro.go.jp

 

 過去最低の数字という文章が躍る。

一方、アメリカをどんどん追い上げていくはずの中国も変調していることが判明した。

mainichi.jp

 

 中身の純粋な人口増はたった48万人だったというのが、ふたを開けた結果だ。

2017年の出生数は1723万人だったが、2021年はなんと1062万人になったのだ。

 両大国にとってはこれは由々しきことだろう。経済成長の柱である人口オーナスがうさん霧消してしまいそうなのだ。

 今年に入ってからのアメリカの株式市場の動きもこの数字と無縁ではないだろう。

 コロナ対策においても両国はどうやら失敗したということになりそうだ。アメリカの感染者と死者の爆発的増大はひどいものだった。確かにワクチン接種開始は早かった。ただ、後がいけない。アンチワクチン派が半数を占める国の自由とはこんなものだったわけである。この個人の自由意識は銃社会であることと無縁ではないだろう。

 危機の時代には若いリーダーが現れて、見事な統率力を発揮したのがアメリカだったはずだが、十分老人のトランプ大統領の後が80歳のもっと高齢者しか適任がいなかった。そこにアメリカの重篤な病理的症状があるのだと思う。

 それにひきかえ、中国のゼロコロナ対策は見事なものだった。巨大都市をロックダウンして感染者を徹底除去する統制力のすごさを見せつけた。欧米などの先進国はあっけにとられたものだった。

 少なくとも2021年の途中までは。

だが、オミクロン株など感染力が強い変異が現れ、いつまでゼロコロナを続けるのか不透明だ。冬季オリンピックで多くの外国人が流入する2月がやってくる。

 このまま何年もロックダウンによるゼロコロナを行うのはマイナスだろう。ゼロコロナ対策が人口増48万人という未曾有の数字の原因かもしれないのだ。感染していたら閉じ込められるとなると誰もが妊娠忌避するだろう。

 

 2022年はスーパーパワーの二大国が経済的低迷と政治的な混迷に踏み込む年になるような予感というか、悪寒がしてならない。牽引者不在の国際情勢って想像したくない。

 

【2022年2月追記】

ロシア人口、21年は100万人減少」とロシアの人口減が報じられた。かつての強国も昔日の感がある。この国の人口減は2020年に始まっていたそうだ。もともとが総人口1.4億と日本人より1割程度しか多くない。広大な地域にロシア人と少数民族がすみわけした多民族国家だ。それでもこの有り様だ。

 北方領土を押さえていても住民減でこのテイタラクなら、あまり意味がないはずだ。

 

【参考文献】

 コロナ直前の予測が下記の本であるが、2021年以降はこの予測からどれだけずれるかが見どころになる。コロナによる下方側へのシフトなのだ。