大川周明はそれなりに評価すべきなのだろう。
極東軍事裁判でGHQは大川をナチの御用学者と同様なイデオロギー扇動の狂信家に仕立てようとしたが、失敗した。
そのあたりを含めて彼の客観評価は松本健一の本に詳しい。リベラルに近い松本が、極右の思想家大川周明の再評価をしているところがいい。右だの左だの言って二元的に思考するのには飽き飽きしている私には清涼剤だった。
- 作者: 松本健一
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2004/10/15
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巣鴨プリズンに閉じ込められた大川が専念したのが「コーラン」の翻訳であり、その知的血脈は井筒俊彦に受け継がれる。
井筒俊彦はデリダをして天才と言わしめた日本のイスラム学の権威である(デリダとイスラムは関係ないだろ! でもエラノス会議に招待されたまれに見る世界的学者だ)
実のところ、司馬遼太郎と井筒俊彦の対話のところで井筒が、大川に認められてと発言しているところが唯一の外部に見えているポイントでしかない。
大川は満鉄調査部や軍部とも関係を継続しつつ、大東亜共栄圏、正確には大アジア主義のイデオローグでもあった。
北一輝の親友でもあり、ライバルである。米英を主とする経済封鎖、いや帝国主義的な包囲網に対抗するには日本を盟主とする精神的共生圏を確立すべきと目論でいたことは間違いない。イスラムはその抜かしてはならないリングだった。
だが、例えば日本におけるイスラムの接触を概観している、この本には大川周明の名がない。
イスラームのロジック―アッラーフから原理主義まで (講談社選書メチエ)
- 作者: 中田考
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