サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

科学技術:1900年と2000年の最初の十年間の比較

 1900年から最初の十年間、どれだけの重要な科学的発見、技術上の発明があったかをリスト化した。

1900
メンデルの法則再発見。
プランク、作用量子の仮説発表

1901
ド・フリース、突然変異の発見
ABO式血液型の発見

1903   
原子崩壊説を提唱(ラザフォードとソッディ)
飛行機の実験(ライト兄弟)

1904   
原子模型の理論を発表(長岡半太郎)
二極真空管の発明(フレミング)

1905   
特殊相対性理論、光量子仮説を唱える(アインシュタイン)

1907   
三極真空管の発明(ド・フォレ)

1908   
最初の合成プラスチック"ベークライト
オンネス、ヘリウムの液化に成功
へール、太陽黒点の磁性を発見

1910
トーマス・モーガンショウジョウバエの実験で突然変異

   
かなり華々しいものばかりだ。これらの業績が現代技術の基礎になったためでもあろう。
さて、2000年から10年経過して、今日においてはこれらに比肩しうるものは何であろうか?
 めぼしい業績をネットの科学史年表から選択すると、

2000
クローン豚誕生(英)

2001
IPCC第3次評価報告書(地球温暖化コンセンサス)

2003
ヒトゲノムプロジェクト基本的設計図完了

2007
京都大学山中伸弥 iPS細胞を生成する技術を発表


 その他年代特定なし
脳サイエンス、電子工学とバイオテクノロジー、インターネット関連情報通信技術の爆発的進化と製品化


 やはり、情報通信と生物医療系の技術革新が著しいのが特徴であろうか。基礎原理に関する発見が弱いと感じるのは筆者ひとりだけだろうか。
それらが1900年代は当然、機械技術や医療も進化していたので、相殺されて同じ程度であると断言していいもんかどうか。
 要するに、私的な見解としては、21世紀において応用的な分野の進展が著しいけれど、基礎的・理論的なインパクトある成果はあらわになっていない(あるけど知られていない)状況なのだと思う。
 素人の主観的な判断でものいいをすると、特殊相対性理論に対応するような普遍的基礎的な発見はないんじゃないだろうか。ヨーロッパの巨大加速器LHCによるヒッグスボゾンの発見はまだのようだし。*1
一方で、天文学上の発見はそれこそ余多の星ほどある。これも巨大観測機(ハッブル望遠鏡のような)の応用技術の賜物だろう。

 だとすると21世紀の科学技術は20世紀とはかなり異なるものになりそうだ。それらは巨大科学と社会に奉仕する技術の時代なのだろう。いうなれば、世界観を変えるのではなく、生命観地球観を変えるそうしたテクノロジー中心になるのだろうか。

科学の終焉(おわり) (徳間文庫)

科学の終焉(おわり) (徳間文庫)

 そういえば、科学ジャーナリストのホーガンは著名な最先端科学の研究者をインタビューして、理論科学の袋小路性をかぎつけている。つまり、壮大な基礎理論は観測できなくて頓挫するようになる。今となれば、20世紀末の古い本であるが、やはり気配はあったのだろう。

*1:数年前にあれほど活気のあった超弦理論はいつの間にか音無しの構えとなってる