夜間に突然死する人のことがひところ話題になった。昼間ピンピンしてた人が寝ている間にコロリと逝ってしまうのである。多くは働き盛りの男性に起きるようである。
突然死のあるケースが忘れられない。
夜分に突然目を覚まし、死ぬ間際に、その人は「自分は恐ろしい夢をみた」と言い、事切れたのだそうだ。
どのような悪夢を体験したのであろう?
宮城音弥の『夢』には参考になる類似の体験例がある。この報告では、身体の苦痛が悪夢を呼び起こしているようだ。しかも短時間に夢の物語に起承転結があるところがスゴイ。
「私は恐怖時代を夢に見る。私は惨殺の場面にきており、革命裁判所に出頭していた私は、ロベスピエールやマラーやフーキエタンヴィルなど、この恐怖時代の、すべての、もっともいやな人物をみている。私は彼らといい争いをする。最後に私が十分に思いだせない多くの事件があったあとで、私は裁判をうけ、死刑を宣告され、ひどい雑沓のなかを革命広場へ車でひかれてゆく。私は断頭台にのぼる。死刑執行人が、運命の板のうえに私をしばりつけ、その板を動かす。刃がおちてくる。私は自分の頭が胴体から離れるのを感ずる。
私はひどく激しい苦しみにとらわれて目をさます。そして首にベッドの器具がとれて当ったけいついのを感じた。それは、とつぜん離れて、ギヨチンの刃のように、私の頚維の上に落ちてきたのだ。」
先頃、自分がみた夢がその近接体験であったのではないかと考える。
自分が搭乗した大型飛行機が着陸に失敗する。地上に飛び散った機体の割れ目からもがくように抜けだそうとする。付近にはたくさんの旅客機があり、どれも事故に巻き込まれたようだ。それらの燃料の爆発がどんどん間近に迫ってくる...
そんなところで、目が覚めたが心臓が恐ろしいほどバクバクと鼓動をしており、呼吸が異様に苦しいのに気がついた。心臓の持病などないのにそんな状態であったのだ。
「恐ろしい夢」とは、そんな死と隣り合わせな光景であったのに違いあるまい。
かつて、著名なゴシック小説の大家が毎晩のように悪夢におそわれるようになった。
亡くなったある晩に駆けつけた親友が言うには、「彼はいつも崩れ落ちる屋敷に居合わせる夢に悩まされていました。とうとう下敷きになったのですね。」
ポーの『アッシャー家の崩壊』はポーの実体験であるまいか。
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