エジプト文明、メソポタミア文明、インダス文明、黄河文明と並べて、中国のご先祖の黄河文明だけが、連綿と今日まで続いている。
それだけでも驚嘆すべきことだ。
これらの古代文明は大河の流域に繁栄し、衰退したのだ。しかるに黄河文明は生きながらえた。その長寿の秘密はやはり自然との共存が中国の智恵だったと見るべきではないかと考える。
治水と土壌の確保がほとんどの古代文明では失敗している。メソポタミア文明やインダス文明では塩害が表土を蚕食している。荒地のなかの都市遺跡がこの古代文明の特徴であるようだ。
エジプトはどうか? ナイルの賜物とヘロドトスに賛嘆されたエジプトもやはり表土が流失し、周辺はゆるやかに砂漠化していったようだ。エジプト王朝はBC3000年からBC300まで続く。この間、流域は豊かな農土であったようだ。その後のローマ帝国時代まで穀倉地帯として帝国市民に食糧を供給していた。今日ではその面影はない。ローマ時代にはジャングルがあったようで、滅亡した巨大なバーバリライオンがその象徴だろう。
黄河文明は20世紀にいたるまで膨大な人口を養い続けた。その深い叡智の一つとして過酷な生存様式というのもあったのではないか。厳しい刑罰や大飢饉、それに時折訪れる戦争の季節。
中国史家である桑原隲藏の「支那人間に於ける食人肉の風習」が語るような凄惨な風習もある。これは文化大革命のおりにも蘇ったという。
まことに特異な場所だ。しかし、やはり2000年前には巨大な哺乳類が住める深い森林があったようだ。孔子の時代に麒麟の死体が発見されたと史書にあるのが、その一例だろう。今日ではそんなモノはどこにもない。森林も巨大な哺乳類もだ。
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