サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

オランダの反日感情

 今回の震災で日本人はこれまでよりいっそう、よそ目を気にするようになった。
 時代が変わったせいか、日本の報道で、海外メディアでの取り上げが、どうだこうだと書き立てるのが普通だし、大きなテーマになっている。国際貿易で生き延びているお国柄、孤立した日本というのはありえないのであろう。
 そんな中で目についた親日反日のお国ぶりの調査があった。
  http://kyoan.u-biq.org/enq_shinnichi.html
中国や韓国の反日感情は予想通りではあるが、ヨーロッパでオランダ人の反日感情が多めなのである。というかこの調査では一番対日感情が悪いのがオランダになっている。
 例:http://blogs.yahoo.co.jp/blogger2005jp/49532830.html
 なんの利害関係もないし、江戸時代にも鎖国の壁をこえて行き来していた唯一の西洋国家なのに、なぜだろう?

 これは個人的な意見でしかないが、インドネシアの件が尾をひいていると思うのですなあ。
 太平洋戦争前までインドネシアはオランダの植民地であった。しかし、1940年の太平洋戦争の開戦と同時に8日間で占領してしまう。オランダの「栄光ある350年の植民地の歴史」をあっという間に突き崩したのだ。
 以後、3年間日本軍が軍政をひく。その中でスカルノなど独立の闘士を解放し、PETAなる武装インドネシア人を組織化して、軍事教練を行ったりした。インドネシア人にとっては驚きだったらしい。反対意見もあったが教練を受けることなる。彼らが後の独立戦争の中心組織となる。

 人格的にも優れた名将今村均が親インドネシア的施策をとる。オランダが弾圧していたイスラム教も公認している。これは大川周明の影響もあるのだろう。独立戦争ではイスラム教徒が先導して進めることにとなる。なんと子供らへの義務教育も始めた。ただの植民地主義ではこうはいかなのではないか?
こうした一連の行為は軍事的な戦略でとられたものであったけれども、現地インドネシア人には多大な政治・文化インパクトをもたらした。また、厳格な軍事的な統治であってけっして民族が解放されたわけではないけど、「自由と独立」が現地人にも一瞬、垣間見れたのだろう。(敗戦がみえた)末期にはインドネシア独立を確約したのだ。
 黄色人種が優秀なる白人をいともたやすく追い出し、見かけだけではあるのだが平等な扱いをする同種な民族が出現したのであるから、独立の機運にプラスとなったのは間違いあるまい。 それに、横柄で差別的なだけの白人とは異なり、日本兵は田植えなどよく働いたと伝わる。*1

 1945年の8月、日本はあっけなく負けた。インドネシアはオランダの植民地に逆戻りかと思ったのは、連合軍だけだった。4年間にわたる戦闘をへて独立を勝ち得たのである。ソ連など共産圏が武力支援を行ってはいない。日本軍の武器をとって戦い、80万人の犠牲を払いつつ、自力で独立を勝ち取った。
 インドネシア独立戦争に日本は陰ながら貢献したわけである。こちらの専門的かつ客観的な独立史サイトでは、12人の日本兵4000人の蘭軍を一晩足止めした実話が紹介されている。翌朝、彼らは全員戦死していた。合掌。
 アジア盟邦の独立に殉じたのは、あっ晴れだ。日本兵1000人以上が独立戦争に参加したとされる。

 オランダは第二次世界大戦では戦勝国であったが、インドネシアの喪失により連合国最大の領土喪失の悲惨をなめた。350年の間の財産・利権がすべて喪失する。インドネシア諸島が唯一の植民地だったからだ。彼らの怒りの矛先は旧日本軍と日本に向けられた。ちなみに、BC級戦犯の死刑数はオランダによるものが最大である。

もう一つ後味の悪い逸話を追加しよう。

 1948年、当時占領理事国であったオランダの駐日大使が吉田首相を大使館に呼んで「出島を復元するか、或いはその費用約二十億円を賠償金としてオランダに払うか」と強硬な申し入れをした。

                          『日蘭交渉の歴史を歩く』より

 敗戦後の混乱期に乗じた無理難題である。だが、ナチドイツに本国をメチャクチャにされたので、こんな言いがかりをつけたのであろう。いかにオランダが困り果てていたかが分かるというものだ。


....というわけで、オランダは最大の利権と植民地を日本の「侵略」で剥奪された恨みがいまでも一部の国民に残っている、とそう考えた次第であります。反日感情の原因をそこに求めるのは下衆の勘ぐりだろうけどねえ。
戦後のアジア独立国の指導者らが集合したバンドン会議で韓国が日本のことを批判したが、インドネシアの代表はこういったそうだ。
「日本は36年の支配でお国に京城帝国大学をつくった。オランダは350年の支配で我が民族になんら教育機会を提供しなかった」
韓国代表は黙ったそうだ。...という戦後史のひとコマが知られている。

インドネシア独立戦争に協力した日本兵の映画

 今村均の伝記。アホな陸軍にもこうした人物がいたのだ。彼の人物を偲ぶべきだろう。

責任 ラバウルの将軍今村均 (ちくま文庫)

責任 ラバウルの将軍今村均 (ちくま文庫)

 この本の著者たちは「右」偏向だが、単なる侵略だけではなかった太平洋戦争の別の成果を示唆してくれる。

世界から見た大東亜戦争

世界から見た大東亜戦争


【参考ブログ】手前味噌であります。
長崎出島の現在
http://d.hatena.ne.jp/Hyperion64/20101221/1292931864

大川周明
http://d.hatena.ne.jp/Hyperion64+universe/20100829/1283083971

*1:負の側面=体罰憲兵、強制労働があったのは事実だ