60年前に亡くなった女性のがん細胞が増殖中である。女性はアメリカ人ヘンリエッタ・ラックス。
試験管(in vitro)の中で彼女は不死となった。
その数字の上での不条理さを記述してみよう。
ヒーラ細胞はがん研究で有名な細胞株で、世界中の研究室に分与されている。
その推定重量は5000万トン。一つのヒトの細胞の重さを1×10^-15 Kgとするとその数は5×10^18個である。
ヒトの全細胞が約60兆個とするならば、およそ8万人分のヘンリエッタがいることになる。人がどんなに頑張っても60年(ほぼ二世代)で数万人になるのは無理だ。
初めのヒーラ細胞が一つだったとして、60年後の今日に5×10^18個となるには、一日の増殖率は0.2%であれば十分だった。年に直せば105%である。
がん細胞も恐ろしいが、ひとの研究とやらも何やらオソロシイ。
ヒーラ細胞の隠れた人間ドラマを描いて最近話題の著作である。
- 作者: レベッカ・スクルート,中里京子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/06/15
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ヒーラ細胞本の著者Rebecca Sklootの解説