サイエンスとサピエンス

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フィンランドの先駆的な放射性廃棄物処分

 フィンランドが進めている高レベル放射性廃棄物処分の先駆的な実践がドキュメンタリーとなっている。
 その名も『100000年後の安全』だ。10万年経過しないと放射性廃棄物が安全な物質にならないことからきたタイトルだ。

 オンカロ・サイトという古い安定した岩盤地層の奥深く、コンクリートでガチガチに強化した地中施設を2100年までに完成させる。地下420mだそうだ。
 そこに原子炉から副産物の高レベル放射性廃棄物を運び込み、頑丈に封印し、厚い扉で封鎖し、土で埋め戻すのだ。

 地中深く埋めるための場所選びから、施設の概要と10万年もの間、保管することの歴史的、いや地質時間的な意味を探るものだ。
 なかなか徹底しているものだと感心した。日本にはこんな何億年前の岩盤地層なんてありそうもない。犬も歩けば活断層か、火山にぶち当たる土地柄だからね。オンカロの地図を下につけた。

 さらに良かったのは、10万年隠蔽することの歴史的な意味だ。ピラミッドの意味さえ分からなくなる人類がこの封印された場所の記録を保持できるか? 数万年先に放射能の危険性を理解できるか? 幾重にも頑強に封鎖したのが、かえって隠し財宝と思い込み盗掘する「他の知性体=次の世代の支配種」が出てくるのでは?

 こうした疑問に答えようとする態度だ。これまでのところ最長の持続文明は中国文明黄河文明)だろうがたかだか1万年の持続である。いまの中国はその後裔だ。でも古代の記録はせいぜい2000年までしか遡れまい。
 その次に長いのはエジブト文明なのだろうが、5000年以下だったと思う。それも古王朝とか中期王朝とか分断されている。
 我らが現代文明がいつまで持続するのか、深く考えさせる作品でありました。


映画『100000年後の安全』公式サイト
http://www.uplink.co.jp/100000/

 ONKALO=オンカロ=隠された場所という意味だが、mapには公開されているようだ。地図でみると近くに河川があるのだがいいのかなあ。


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