サイエンスとサピエンス

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事故と組み合わせ爆発

 福島第一原発のような原子炉事故や笹子トンネルの天井パネル崩落事故を短縮化して表現するなら、大規模インフラにおける安全管理の手落ちということができる。
 とくにその予兆を事前に察知し、予防設計するという意味で安全分析が不可欠なのだが、これが難物なのだ。
 何百というシステムが複合的に組み合わされている原子力発電所、長大な高速道路のトンネルは山塊の入り組んだ地層に穿たれた円筒空洞という静力学系を鉄とコンクリートという構造設計で維持するという複雑な問題でもある。
 つまりは膨大な組み合わせ問題においてどのような事故リスクが潜んでいるかを事前に察知しようというチャレンジなのだ。
 これがそう簡単ではない。つまり事故が起こってみないと事故原因を理解できないジレンマにあるのだ。その根本的原因といえるのは組み合わせ爆発とそのひとつひとつの起こりやすさの希少性にある。
 どこかで抜けが生じるがどういうメカニズムで抜けが生じるのかが技術者には分からない。
 これが現在のテクノロジーの本質的な限界である。事故に不思議の事故なし、なのだがどの安全方策がそれを予防するかは神のみぞ知るなのだ。
 逆に言えばどのような安全神話も必ず終末を迎える。日本の誇る新幹線も例外ではないだろう。
 何重にもフェイルセーフを施しているはずの核兵器の管理も同様な事態となるだろう。それは残念ながら巨大技術の宿命というべきだ。