サイエンスとサピエンス

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リチャード・ファインマンの泣ける話

 アメリカの物理学の黄金期を体現した物理学者リチャード・ファインマンは日本でも知名度が高い。それも幾多のベストセラー、ことに『ご冗談でしょう、ファインマンさん』があるからだ。
もちろん、あの物理学教程でこれぞ天才というイメージを蒸着させられた理系男子&女子もおられよう。

 『ご冗談でしょう、ファインマンさん』やボンゴを打つ映像などから順風満帆の人生をファインマンが満喫したと思い込んでいる向きに、下記の映画『Infinity』(1996)を鑑賞いただくとしよう。

 ファインマンが27歳の時、最初の妻アーリーンを亡くした実話にもとづくストーリーである。恋人であるアーリーンは結核にかかったことを知る。にもかかわらず、というより、だからこそ若い二人は両親の反対を押し切り結婚する。
甘い新婚生活は一瞬にして終わり。きびしい闘病生活に変貌する。若いからこそ甘受できたのだろうが、辛いことには変わりない。
 そして、死別。
 ファインマンの最後の著作のタイトルはアーリーンのことば「誰がどう考えようとかまわない」から取られた。
つまりは、戦時中のアメリカにも『風立ちぬ』の悲話があったということだ。

翻訳もある『ファインマンの手紙』にはアーリーンとの往復書簡も収められている。若い二人の手紙は微笑ましくも痛々しい。
99頁に亡き妻に書き、出すことがなかった手紙がある。

 追伸にはこうある。

この手紙は出さないけれど許してくれるよね。君の新しい住所を僕は知らないんだ



知らぬ人は知らないボンゴ映像。かなりの腕前?


ファインマンの手紙

ファインマンの手紙