中国人が日本の洗浄機付き便座を爆買するのをこれまた日本側が自慢げにネットで話題にする。ただし、多くの日本人は爆買には脅威と不安を感じているというのは否めない。
そうは言いつつ、クール・ジャパンで洗浄機付き便座を真っ先に取り上げたのは日本のマスメディアである。
だが、その一方で、日本人がいつも評価の国際基準にしている欧米の話題に洗浄機付き便座はならなかったような気がする。本当に褒めてもらいたいのは欧米人という日本の習い性もあるが、そんなビロウな場所を表立って論じないのはWashroomは公共の話題にしない文明だからだろう。洗い捨て去るだけの場所であり、公共衛生の対象であっても倫理性を帯びることもなし、ましてや宗教との関係などはまったくない場所なのだ。
自分が思うに、中国と日本は厠(トイレ)への価値観が似ているのだ。ほとんど共通だといっても間違いないだろう。だから、日本に来てトイレの綺麗さに中華ピープルは感嘆すると思うのだ。
その価値観の根源は二つある。
一つに儒教精神がある。
「先生は温良恭倹譲の五徳を備える」と子貢は言った(『論語』(学而第一))。
譲とは謙遜のことだ。
謙遜とか謙譲の徳を家庭にもちこめば、不浄な場所を清潔にに保つ行為というのは孔子の教えに適うものになる。優れて倫理的なことなのだ。
二つには民間信仰がある。厠神の信仰だ。
中国では紫姑(しこ)神、日本では厠神だ。両者とも女神である。おそらく起源は共通ではないだろうか。
全国各地で正月と盆に青柴(あおしば)を供える様式が伝わることからのも紫姑神とつながる。
日ごろ、摩擦系のニュースばかり目立つ日本と中国ではあるが、こうした視点で論じてみるのも悪くはないであろう。
【参考書】
「厠神」については定番の民俗学の本。
- 作者: 飯島吉晴
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/09/10
- メディア: 文庫
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それなりに話題になった「儒教」の再評価の書籍。でも、欧米系はビジネスでの成功しか評価指標がないのかな。一神教世界観ではしょうが無い、か。
儒教ルネッサンス―アジア経済発展の源泉 (未来ブックシリーズ)
- 作者: レジリトル,ウォーレンリード,Reg Little,Warren Reed,池田俊一
- 出版社/メーカー: たちばな出版
- 発売日: 2002/04
- メディア: 単行本
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