サイエンスとサピエンス

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関数電卓のガラパゴス的進化

 関数電卓の競争は知らぬ間に異次元ゾーンに突入している。自分が前世といってもいいほどの大昔、購入しドットプリンターでグラフ作成して悦に入っていた関数電卓(programmable)とは違う方向に跳躍進化している感じだ。

 カシオ 関数電卓 fx-375ES-N を例に取る。
メーカーサイトでは
https://casio.jp/dentaku/products/fx-375ES/
 数学自然表示 9メモリー 394関数・機能 ソーラー・電池 2電源 と味気なく説明がある。製品の魅力を積極的にアピールする気配が微塵もないデザインとコンテンツだ。社のなかで冷遇されているような雰囲気すらある。

しかし、394関数とは、なんだろう。

 
1) 基本関数

三角・逆三角、対数・指数、ベキ乗・ベキ乗根、√、2乗、立方根、逆数、乱数、階乗、π

2) 分数計算

3) 時間計算 60進・10進数

4) 2進・8進・16進計算

5) 論理演算

6) 双曲線関数・逆双曲線関数

7) 複素数計算

8) 積分計算

9) 微分計算

10) リプレイ機能
一度実行した計算式を呼び出し、修正して再度実行できるので、数値を置き換える繰り返し計算等に便利。

11) アンサー機能
最新の計算結果を記憶し、すぐに呼び出して次の計算に使う事ができます。

12) プレアンサー機能
直前に加えて、2つ前の計算結果も保持しており、呼び出して次の計算に使う事ができます。

13) マルチステートメント機能
:により式を区切り、続けて複数の計算を行わせる機能です。

14) エラーリカバー機能
エラーが生じた位置にカーソルが表示される機能です。

15) 連続演算機能
EXE(または=)キーにより、演算を終了させた結果に対して、続けて計算を行う事ができます。

16) %

17) 余り計算
割り切れない計算において、結果を商と余りで表示します。

18) 最大公約数・最小公倍数計算

19) デュアルテーブル演算
2つの関数式より、数表を作成することができます。

20) リストベースの統計データ編集機能
統計データを一覧表の形式でわかりやすく入力でき、統計計算に利用することができます。

21) Σ計算
「数列の第n項(および、第m項から第n項)までの和を計算することができます。」

22) 標準偏差

23) 2変数統計

24) 順列・組み合わせ

25) 科学定数機能
科学技術計算でよく使われる定数を内蔵しています

26) 座標変換

27) ENG変換機能

28) 方程式計算機能

29) ソルブ機能
方程式の変形をせずに任意の変数の値を算出できます。

30) 単位換算(200)

 などを十把一からげにまとめて394としているような雰囲気だ。それにしても多い
 なにしろ微分もできる。積分も定積分不定積分もありだ。
しかも太陽電池で動いたりする。

 驚くべきはお値段や!  1,315円(税込み)なり。大昔の自慢のプログラマブル電卓は1万くらいしていた。

カシオ 関数電卓 数学自然表示 394関数 10桁 fx-375ES-N ブラック

カシオ 関数電卓 数学自然表示 394関数 10桁 fx-375ES-N ブラック

 より高機能を求める仕事師には「FX-JP500-N」がある。

お約束の味気ないカシオの製品紹介ページ。
https://casio.jp/dentaku/products/fx-JP500/

 自分の見るところ、上の「標準版 fx-375ES-N」との違いはこんなところか。


1) 整数化計算機能

2) 素因数分解機能
10桁以内の正の整数を3桁以内の素因数に分解できます。

3) マルチリプレイ
実行した計算式をさかのぼって呼び出し、修正して再度実行できます。

4) デュアルテーブル演算
2つの関数式より、数表を作成することができます。

5) リスト機能
複数の数値を一括して記憶させ、その数値をもとに、関数式の計算、統計計算、グラフの描画、数表の作成などが行えます。

6) リストベースの統計データ編集機能
統計データを一覧表の形式でわかりやすく入力でき、統計計算に利用することができます。

7) 四分位数計算
箱ひげ図で称される四分位数や中央値の計算が可能です。

8) 科学定数機能
科学技術計算でよく使われる定数を内蔵しています

9) 数値テーブル機能

10) 範囲指定整数乱数機能

11) 単位換算(302)
日本語によるメニュー階層で、換算する単位の指定が容易になりました。

12) 変数一覧表示機能

 これで2,584円なりだ。お安いこと限りなし。
関数の種類ということでExcel2016は496関数があるという。カウントの仕方が違うのだが、それでもこちらの電卓の方がコストパフォーマンスはいいであろう。何しろパソコン要らずの電気要らずなのだから。

カシオ 関数電卓 FX-JP500-N 高精細 日本語表示 関数・機能500以上

カシオ 関数電卓 FX-JP500-N 高精細 日本語表示 関数・機能500以上

 カラー液晶(384×216ドット)版の関数電卓はよりハイグレードだ。そのお値段は2万円台だ。残念ながら生産中止らしい。https://casio.jp/dentaku/products/fx-CG20/

カシオ カラーグラフ関数電卓 10桁 ブラック FX-CG20-N

カシオ カラーグラフ関数電卓 10桁 ブラック FX-CG20-N


シャープの対抗馬の製品も紹介しておこう。ほぼ同一価格帯に同程度な機能の電卓を投入している。

 しかし、いったい、どんな用途なのだろうか?どんな人が使うのだろうか?
 興味深いのは外部インターフェイスがまるで無いことだ。計算結果は表示されるだけ。どこかに書き込んだり、Bluetoothで飛ばしたりするのは考えていない。その場で計算結果が理解できればいい。紙に書き写すか、頭に焼き付けるか、人に指値を出すかのフィールド業務向け、もしくはレポートを書く学生向けなのかな。


  なお、かつてのポケコンの末裔が存続の危機に面しているらしい。BASICなどでコーディングできる。
価格帯は2万4千円くらいのようだ。21世紀のスマホ全盛期にあって、珍しくもニッチな商品えあることは間違いない。