サイエンスとサピエンス

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その時、歴史が動いた:「ヘレン・ケラー」

 数年前までお茶の間歴史ファンの愉しみであったNHKの番組「その時、歴史が動いた」
その中でも地味ながらもっともジーンときたのが、「ヘレン・ケラー」だった。
 古いやや差別的響きのある「盲聾唖」。まさにその三重苦でありながら大学を出て一身の独立を勝ち得た20世紀奇跡の聖女ヘレン・ケラー
 戦前と戦後、両国民にとって困難だったあの太平洋戦争を挟んで、(視覚)障害者のために一身を捧げた日米の偉人と友情を知らしめたのだ。

http://www.lighthouse.or.jp/helenkeller.html

 いままで埋もれてきた一民間人岩橋武夫との交流を掘り起こしたのがよかった。岩橋武夫の情熱がなければ障害者対策は遅れたままであったろうし、ヘレン・ケラーも多忙の身でありながら遠い日本にまで来ることはなかった。*1
 岩橋が自身不自由な身体を駆って米国のヘレンのもとにおもむき、日本の障害者福祉のために来日を懇願したからこそ、戦前の来日とその圧倒的な国民の印象の刻印は生じ得なかっただろう。
 さらに、戦後も岩崎の要望に応え困難を排除して来日する。敗戦後の混乱にある日本に、不満げなGHQの認可を得て。その1948年のヘレンの来日は人びとに大きな希望を与えた。
 先の見えない生活にあえでいた日本人はその友情に感謝した。それはそれで、語られるべき別の大きな物語であろう。

 番組で語られた逸話が良い。
 岩橋亡き後、1954年ヘレンは今ひとたび日本をひそかに訪れる。そして、日本に到着したその飛行場で「タケオ!」と泣き崩れた

 これは、岩崎との太平洋と民族、戦争を超えた使命感、こころの交流があったればこそなんでしょう。このハナシにはウルウルしてしまう。
 死後、日本政府から彼女に勲一等瑞宝章が贈られたのだが、それはどちらかというと蛇足なのかもしれない。

奇跡の人 ヘレン・ケラー自伝 (新潮文庫)

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*1:不思議な偶然だろうが江戸期近畿には岩橋検校がいた