サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

朝鮮の古代科学

 朝鮮半島では古くから科学技術が発達した。その独自の業績とレベルは同時期の日本は足元にも及ばない。偉大なる中国文明の影響があり、地理的・歴史的に当然ではあるけれどね。
 それを先駆的な著作『韓国科学史』から抜き出して紹介しよう。

1)細線紋青銅鏡 紀元前5ー4世紀
 13000本を超える細線と100個の同心円。この精密さが古墳時代以前に達成されているとはほとんど信じられないが、事実である。



2)伽耶国 鉄製鎧 5世紀
 半島南端(釜山ふくむ)の伽耶国の鉄文化はきわめて特異なものであり、新羅百済にもないものであった。



3)慶州 暁星台 7世紀  現存する世界最古の天文台
 文字通りの世界最古の石造観測所である。優美な建造物でもある。



4)世界最古の印刷術
 これは偉大な業績であり、日本にも招来されている。
『無垢浄光大陀羅尼経』8世紀 世界最古の木版印刷
『高麗大蔵経』8万枚の印刷用木版  大乗仏教の世界的遺産



5)世界地図『混一疆理歴代国都之図(こんいつきょうりれきだいこくとのず)』
1402年製で日本の龍谷大学所蔵である。ギャヴィン・メンジーズの『1421』では「世界の宝」とまで持ち上げている。李氏朝鮮の時代に作成された。なんとアフリカまでも描かれている。この地図の由来やいかなる系統のものかは知られていないようだ。
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=137094



6)天象列次分野之図 1395年の天文図 
 1467個の星辰が描かれた精密な天文図である。天への好奇心は半島において強かったのだろうか? 星辰信仰との関連性を調べるべきだろう。



7)渾天時計(ホンチョンシゲ)
17世紀の天文器具と時計の合体メカである。
http://sca.seoul.go.kr/japanese/culturalAsset.jsp?sCode=100193&sClssCode=4&sClssCode2=0



7)ガラス 5−6世紀 新羅にて製作された
 古墳などから発掘されるガラス器類は中国や西域由来ではないことが立証されている。一部の学者は古代ローマとの交流を唱えているくらいだ。
http://www7a.biglobe.ne.jp/~yossy-/

 ざっくりとこれだけの事績を古代から近世以前に達成しているのだ。
伽耶国の鉄は出雲に流れ込んでいったかもしれないし、ガラスがきっちり保存されているのは正倉院だけだろう。飛鳥地方の謎の石造遺物は朝鮮由来だろうけど、半島にはその伝統は残存しなかった。渡来人や亡命人はヤマトンチュにしっかり文明を伝えて、われら大和ピープルはそれを保存しているのですなあ。
 お互い持ちつ持たれつなのですよ、半島と島国はね。
 天文・地理技術はどこかで消え去ってしまったのは残念であるけど。なぜか不思議な地図5)日本にあるのは妙だ。島国文化は江戸時代には世界史的に比較しようがないほど独自の境地に達しているので、よしとしよう。

 日本を小馬鹿にするのは当然かもしれないけど、でもさ、それを継承していったのは日本だし。それに日本にもイイトコあるんだけどね。


 これらを説明している朝鮮科学史の先駆者の代表作は日本語で読める。

韓国科学史―技術的伝統の再照明

韓国科学史―技術的伝統の再照明

 世界で最初に中国人が15世紀に世界一周したという説のメンジーズの本。5)の地図はこの本でも紹介されている。まさにオーパーツだね。

1421―中国が新大陸を発見した年 (ヴィレッジブックス)

1421―中国が新大陸を発見した年 (ヴィレッジブックス)