サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

人畜感染症の小事頻発に思う

 大部分の一般市民にとっては、命に関わるほどのこともない、周辺世界の小事なのだがつなぎ合わせて見ると怖いことが増えている。
 「細菌・ウィルスの逆襲」というべきか。人を襲うだけではなく、周辺の野生動物や家禽を巻き込んでいく感染症の発生が、なんとなく目につくようなのだ。

今年はこんな事件でスタートした年だ。
 日独で時を同じくした「大腸菌感染」の流行
 日本ではHIV感染者が最多を更新
 韓台での口蹄疫の大流行
 
 昨年から今年にかけては、国内で鳥インフルエンザで鶏の大量処分が発生している。実は渡り鳥が媒介になっていると悪玉視されるが、元は鶏舎で発生したウィルスなのだとか。また、昨年の宮崎県の口蹄疫の被害は悲惨なものであった。
 2009年にはH1N1のパンデミックもどきがあった。インフルエンザの変異は人獣感染で伝達拡大してゆくメカニズムである。東南アジアは鳥インフルエンザ発生にたえず怯えている。
 同年にインドでの多剤耐性菌の出現が話題となった。抗生物質を乱用する同国の医療に疑問が高まったである。

 2004年のBSEの騒ぎははるか過去のものに感じる。SARS重症急性呼吸器症候群)の中国での発生は2002年であった。

 これだけ増殖・人口爆発した種である人類を餌食にしようとする細菌やウィルスが頻出するのは自然な現象なのだろう。大腸菌は腸内細菌として人となじみが深いはずであるが、O157アメリカで1982年に出現してから、危険な存在に変貌した。
日本では1990年に幼稚園で2名の犠牲者を出した。それ以来、大腸菌の反乱が相次ぎ先進国を揺るがす。
 これまでおとなしかった大腸菌がベロ毒素をだし、宿主を急死させるような菌種に変質したのはどのような機序によるものなのか?
 多剤耐性菌へと変化するのは自己保存から理解できる。しかし、宿主を致死させてさらに他の宿主に素早く感染する方向に変異した理由は分からない。
もちろん、飛行機による人の移動が感染速度を拡大したり、本来衛生良好であるはずの病院での耐性菌の感染機会を増やし、異常な家畜飼育方法(牛に牛の骨を食わせてBSEとする)でニュータイプの菌の発生など自ら招いたタネが多いのも事実だ。
 人類の過剰衛生と移動の機会が増えたことにつけ込んだ、大腸菌遺伝子の新戦略なのなのであろうか?