サイエンスとサピエンス

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交通網のスケーリングによる国家比較

 交通網、鉄道総延長や舗装道路総延長を国家どうしで比較してみました。その場合に
役に立つのはスケーリング概念です。
 要するに、国の地理的な大きさを特徴づける「長さ」を取り出して、無次元数をつくるのです。
 交通網を無次元化するのに、ここでは、国土総面積の平方根をとる。面積の平方根は長さであります。

 比較対象は、日本、アメリカ、ドイツ、中国、韓国、イギリスである。なんとなく気になる国というわけであります。
 鉄道総延長から比較してみよう。規格化とは国土総面積の平方根で無次元化した総延長を意味する。

 この数値でみると存外、日本の鉄道網は弱い。ドイツどころかアメリカにも遅れている。この総延長統計は、国内統計値より2割ほど少ないようであるが、それでも弱いのだ。本来はトンキロで輸送量をふくめて比較したほうがいいのであります。
 やはり国の隅々迄鉄道が通じていないとエネルギー効率で負けると思います。

 それに引き換え、舗装道路の総延長は、日本が強い。
自動車大国のアメリカを引き離しているのである。

 もはやアメリカ以上の密度で、日本では津々浦々、舗装道路が通っているのでしょう。

 本題とは離れるが、海岸線をみてみましょう。日本の海岸線はチリやカナダと並ぶものがある。そこで面積の平方根で規格化した数値を比較してみます。

 こうして規格化するとチリより上で、カナダに次ぐ位置となる。海岸線に接する割合がこれほど多い国は少ない。狭い国土で海に面している土地が多いことは、必然的に外洋に国民は出ざるを得ないことを意味するのではないでしょうか。

 しかるに今や、商船の船舶数(1000t以上)や総トン数は中国はおろか、韓国にも負けている状況にあるるようです。

 こうして国別スケーリングで、日本の強み弱みが浮かび上がったと考えます。
 国土を緊密につなげる鉄道網を整備し、道路以上に力を入れる。海運に注力することで
世界の貿易ハブとすることが望ましいのです。海運は輸出入だけではない! 貿易の拠点、中継点を整備することもあります。規制緩和を促進し、アメリカ大陸とアジアを中継するハブ港をつくるのがいいでしょう。
 空輸はエネルギー効率上好ましくないと思います。海運を再度伸ばすべきなのでありましょう。

 スケーリング則は生物学では有用なことは多くの研究で立証ずみです。本川達雄氏のベストセラー『ゾウの時間ネズミの時間』はポピュラーですが、なんといってもこちらが圧巻ですね。

スケーリング 動物設計論―動物の大きさは何で決まるのか

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 この書物の基本的な方法論や考え方が、国家の形態を比較するのにも役に立つと信じます。