サイエンスとサピエンス

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アルキメデスの多面体

 古代社会(ギリシア−ローマ期)最大の数学者アルキメデスの業績というと、定番なのが、放物線の面積の算出=取り尽くし法とか円周率の厳密な算定、あるいはテコの原理や浮力の原理である。そうそう、球の体積の公式を求めたのを忘れてはならない。

 近代的な意味でそれらはすべて西洋の数理科学の基礎になったというのは、異論はないだろう。また、かなり優れていたエジプトやバビロニア数学を一挙に追い抜いたのも事実だろう。
 以前ブログに書いた「牛の問題」あるいは「砂粒の計量者」のような巨大数の考案者という側面も合わせ持つ。
 円の内接問題であるアルベロスのような楽しい幾何学トピックもアマチュアにも楽しめるネタを残してくれている。イタリアの農民が近代にいたるまで灌漑に使っていたアルキメデスのポンプという実用技術の発明者でもある(数学史ではなく技術史にでてくる)
 最初の船のスクリューは最初このポンプを模倣して作成されたとかいう。

 それはそれでいいのだけど、アルキメデスの多面体は忘れてはならない彼のメインな業績の一つだろう。古代において正多面体がどれほど尊重されたかはプラトンの『ティマイオス』に典型がある。正多面体には自然の神聖な原型があると信じられていた。それは遥か後代のケプレルやハイゼンベルグまで余韻が響いているのだ。

 ともかくも、その難しさ(三角法もベクトルもなしにユークリッド的手法だけで解くのだ)は半端ではあるまい。

 アルキメデスの多面体は13種ある。
"Cuboctahedron", "GreatRhombicosidodecahedron", "GreatRhombicuboctahedron", "Icosidodecahedron", "SmallRhombicosidodecahedron", "SmallRhombicuboctahedron", "SnubCube", "SnubDodecahedron", "TruncatedCube", "TruncatedDodecahedron", "TruncatedIcosahedron", "TruncatedOctahedron", "TruncatedTetrahedron"

上記の順番で立体像を示す。

例えば、SnubDodecahedronの拡大図

 この頂点は60個ある。その座標は12次方程式の根で表現することになる。デカルト座標系での表現は一苦労である。その座標の数値を下記に添付する。
 こんなことをシュラクサイのヒエロン王のための工作機械や兵器を製作する傍ら、研究していたのである。放物線の面積にしても彼のテコの原理的な静力学発想で証明しているし、球の体積が同じ高さの外接円柱の2/3だというのも、円柱に水を注入して最初に計測してから証明をしている可能性がある。古代最大の数学者は古代最大の技術者だったのだ。
おそるべしアルキメデスなのだ。

今年、こんなNEWSアルキメデス多面体と呼ばれるタイプの立体構造を 有する分子を開発」があった。地下のアルキメデスもさぞかし喜んだことであろう。

アルベロス 3つの半円がつくる幾何宇宙 (岩波科学ライブラリー)

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