サイエンスとサピエンス

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メルセンヌ素数の語る未来

 近ごろ、ニュースにならなくて気になることがある。最大の素数の話題であります。
つまり、これが素数だと判定できた最大の素数の発見が2009年以降、途絶えているのですね。
 メルセンヌ素数 Mp=2^p-1の記録更新が、ほとんど最大素数のギネス記録と同義なのですが、wikiでもわかるように、2009年4月を最後に記録更新は停滞しているようです。
 現在、世界最強の素数判定システムは並列システムGIMPS(Great Internet Mersenne Prime Search)です。いまも稼働中であります。
 世界中のボランティアのコンピュータが参加している、そのパワーをもってしても48番目のメルセンヌ素数はなかなかに判定できないのですね。
 ブランクが3年目になろうというのです。
 これってなんだか象徴的な感じがします。

 メルセンヌ素数の発見の歴史を視覚化してみましょう。
横軸は西暦(最大Mpの発見年)と縦軸はそのMpの桁数。つまり、対数軸です。

Mpの桁数の伸びがここ数年、止まっているのです。2010から2011は点を打てない。

 要するに、マシンの台数と性能の成長が一服したというべきではないでしょうか。インテルCPUもクロック数で性能を言うのではなくコア数で語られるようになりました。並列化が進んでもそれは複数処理が上手になったのであって、計算能力が伸びたのとは異なるのでしょう。
 現行技術によるコンピュータの計算能力の限界、分散処理を含めたものが近づいている、そんな気配を感じるのであります。

 さらに余談を続けましょう。1950年以降のMpの桁数に関する非線形な予測モデルをつくります。50年代以降というのは電子計算機が数論に応用されだした時期という意味合いです。
完全に統計的有意性を判断したものではないけれど、荒っぽい議論はできるでしょう。

これがフィッティングした結果です。モデルの特性から短期しか有効ではありませんが、「2014年に次のメルセンヌ素数が見つかる」のはありえるかもしれません。
まあ、これは予言ではなくて、予報レベルなのです。
それから、伸び悩みもはっきりと分かりますね。
 ムーアの法則、敗れたり! かな? あるいは計算能力は歩調を落としだした。

 もっとお笑い予報を続けると2014以降にカーブが降下しているのは、コンピュータパワーを人類が喪失してゆくのを表してます。素数計算しなくなる?
 あるいは電力不足とか、国家破綻とかで、世界が激変するのをメルセンヌ数の未来予報が告知しているのでは?
 これを「メルセンヌ数の大予報」とでもしておきましょう。

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【参考】日本のコンピュータ数論の開拓者の一人故・和田教授の古典的書籍

コンピュータと素因子分解

コンピュータと素因子分解

 
cとU-Basicの時代の名著です。数百桁の素数を一市民が処理できるのが驚きでした。
その驚きが本になったのが和田氏の本でした。