スマホに象徴されるネット社会が欧米のリーダーシップと先導により世界を被覆した理由の一つは、その文化史的な基盤がすべてヨーロッパの精神的遺産にあるからだというのは誰でもウスウスは知っていることだ。
それを西洋ヌースフィアといっておこう。
このヌースフィアを際立たせるのは「計算」に関わる長大な探求の前史だろう。スマホを含むコンピュータは「論理機械」である。
0と1だけをもとにした論理推論をスイッチ回路に置き換えて四則演算だけでなく、メモリやフリップフロップなどのクロックによる逐次状態遷移を備えた電子論理機械に仕立てのは電子工学者たちである。
その延長に文字表現や画像表示、音声処理があるのは論理学の原理的な延長でしかない。
その淵源には諸学の始祖たるギリシア人がいる。アリストテレスとディオファントスをセレクトとした。前者はともかく、後者のディオファントスは何者かというのは論議があるだろう。数論でのディオファントス方程式の存在くらいしか知る人はいないだろう。数学史家によってギリシア化されたバビロニア系の人物だろうという推定がある。
古代代数の始祖としてディオファントスを評価できるのだ。アリストテレスは古典論理学の始祖とする。
なぜ、論理学がネット社会の原点にあるのかは、興味深い話題だと思う。自分の意見ではギリシア人たちは合意した前提をもとに厳密な推論過程をえた結論を重視した。それは「古典期民主制」なるものがノモス(法)による支配と法に基づく多数者の議論により行動を決定していたからだと推測する。
多数者の合意形成をはかる道具だてとして論理学と修辞学があった。前者は演繹的であり、後者は演劇的だったともいえる。
多数者のコミュニケーションの基盤に論理学が鎮座するのも、なんとなくうなずけるではないか?
論理と代数が物理的な統合を遂げるのは20世紀中葉を待たなければならない。それがブール代数だ。ド・モルガンやブールなどの精神的伝統がイギリスで近代性を増進したのは注目すべきだろう。
そこに至るまでの精神史的径路を下図に示す。
論理学はライプニッツとブールやラッセルを、数学はイスラム圏における代数学の勃興を介在して、ヒルベルト学派に至る流れがあった。
論理機械の技術的実現=電子計算機にはチューリング、ノイマンらがあり、そしてシャノンらがその理論的基盤を据えたといえよう。通信工学はこれも計算機科学の延長にあったというのは不思議でもなんでもない。
哲学的論理学は計算機科学と無関係ではなくゲーデルの後輩であるタルスキやカルナップ、ラッセルの弟子筋になクワインがその意味論を補強していった。その舞台はアメリカになっている。
何が結論かというと哲学の一分枝である論理学と数学が20世紀に電子工学と結合した、その結果が現代のWeb社会になったということだけでなく、Webがどのように機能拡張するかのヒントは、この前史に含意されているだろうということだ。
【参考文献】
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- 作者: G.H.フォン・ヴリグト,服部裕幸,Georg Henrik von Wriht,牛尾光一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2000/07
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ロジ・コミックス: ラッセルとめぐる論理哲学入門 (単行本)
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