ひところ、超弦理論が科学かみたいな批判の声があがった。端的に言えば、なんでも説明できる理論は何事も説明してはいないということなんだろう。ましてや理論構築の現場、実験的な検証の埒外なのだ。
それを雄弁に語るのは時間経過だ。
仮に、第二次ストリング革命からの経過年数を見れば、一目瞭然だ。
1995年にポルチンスキーが鬨の声をあげてから、17年・それだけ経過しても見るべき実験的な成果があがっていない。
かつてのエーテル理論と同じ命運をたどっていく気配が濃厚だ。
それでもウィッテンの業績は姿を変えて生き残るのだろうけど。ちょうどローレンツ収縮がそうであったように。
では、基礎理論は超弦理論やその他のようにお蔵入りで停滞の季節なのだろうか?
素人的には実験装置の限界で停滞してきているのだろうと推測する。何しろ理論検証のために観測精度を向上させ、精度向上には投資額を向上させなねばならない。
それも指数級数的に、だ。
LHC(大型ハドロン衝突型加速器)がいくらかかったか。約80億ドル。6400億円だ。それに付随する学者技術者の運営研究費は別勘定。
つまり、次期装置のお値段は「兆」のオーダーになり、一国家の予算と同じくらいになる。
折しも、世界的不況の蔓延で先進国も、いや新興国も「予算の崖」っぷちにあるのにだ。
活路は宇宙にあると自分は空想する。かつて宇宙線シャワーで素粒子を発見していた時代があったのだし。
観測装置の高度化が宇宙観測分野では顕著だ。21世紀になってからもその勢いは続いている。ハップル宇宙望遠鏡の発見は100個の巨大素粒子加速機による発見よりすごい。
しかもジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡はもっとすごいのだ。
ハワイではTMTが動き出している。30m級の天体観測用反射鏡を備えた天文台だ。
さまさまな形態や反応を起こしている天体を観測することで、基礎理論を検証するんだ。
人類が駆使できるエネルギーを凌駕する巨大なエネルギーで空間・時間・物質の反応実験をしているのが、銀河やパルサーや星雲たちなのだ。
そこからの生成物を検知してシミュレーションと併用することで次期LHCの代替にならないもんだろうか?
ともかくも巨大な実験装置が宇宙なのだ。
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