『ウインドトーカーズ』(2002)というハリウッド映画があった。太平洋戦争でのナバホ族の活躍を描いたものだ。映画ではあの過酷なサイパン戦が舞台だった記憶がある。*1
幾つかの情報源を要約しておこう。
サイパン島は陸軍精鋭を配備していたこと、絶対防衛圏としていたこともあり東条英機は不敗を明言していた。
その顛末はここでの主題ではない。
前線で暗号がどんな役割をしたか、だ。暗号が使わる場合、最前線では短時間での発信と解読が重要になる。日本軍はそうしたレベルのアメリカ軍の暗号はかなり解読できていたらしい。
アメリカ軍は、そのため、コードトーカーを送り込んだ。ナバホ族のアメリカ兵士である。
英語とナバホ語を両方話せる「暗号」要員である。
単純置換で英単語をナバホ語に置き換えていたので、ナバホ語をそのまま無線で使用したわけではない。
それでも、英語をもとにした暗号解読を実行していた日本の情報将校や暗号解読担当たちには全く手に負えないしろものだったのだ。
前線での「暗号」の役割は、かなり重要であった。砲兵の運用で敵兵の位置と味方の着弾情報は時々刻々と変化する。ほぼリアルタイムで伝達解読しなければ兵の損失は甚大になる。コードブック(暗号解読書)を紐解いて換字していては、追っ付かないのである。ナバホ語ネイティブは自然言語で会話して、その任務を的確にこなした。
その活躍ぶりは後の硫黄島の戦いで「ナバホ族兵士がいなければ海兵隊は硫黄島を占領できなかったであろう」とある少将に言わしめたほどのものだ。
その前のラバウルでも日本軍の強力な高射砲を無力化させるのに11人のコードトーカーが大活躍していた。
サイパン戦においても彼らコードトーカーのおかげで、日本軍を排除することが容易、比較的容易であったとされる。一人ナバホ族の兵士が日本軍に捕虜となり拷問を受けて、暗号解読に協力されているが単純置換のルールのお陰で解読されなかったそうだ。
実は、連合軍の前線で使用されていた暗号を日本軍はかなり解読していたのだ。
しかし、ナバホ語の無線利用に関しては完全に無知であり、無力だった。
ところで、チョムスキーの生成文法の観点からはナバホ語は日本語と類似の構造をもつ。
ナバホ語は日本語と同じく、直接目的語は主語の後に来る。前置詞を伴う名詞句は前置詞の前に来る。名詞の所有者を表す句は所有される名詞より前にある...などだ。英語とよりは日本語にナバホ語が似ていたのは皮肉なことである。
従来の説のように暗号戦で日本が全敗というわけではなく、暗号解読においてそれなりに日本軍は頑張っていたが、米軍の方が一枚上手だったということだ。
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navajoとコードトーカーについての情報はこちらに。彼らの存在は2000年に情報開示された。
ナバホ語がどんなものかはこちらの入門映像で。
*1:興行的には失敗だったとされる