太平洋戦争中には英語は敵性言語とされ公用語での英語由来の文字はすべて「ヤマト言葉」に書き換えられた。
「パーマ」を「電髪」としたたぐいだ。あいにくと両方ともに死語だけど。
しかし、ヤマト言葉は英語に敗北するのは避けられないと思われる。思考の速度と論理性、それに正確さで、凌駕しようがないのだ。従って太平洋戦争も負けるべくして負けた。
言語的な優越性の根拠と二つのソースを示そう。
E.H.カーの『歴史とは何か』(岩波新書)と『量子と渾沌』(地人選書)だ。これらは社会科学と現代物理学をコンパクトに凝縮して、市民向けに出版された書籍だ。イギリスの公共放送BBCでの講演もしくは討議会をもとにした本である。
カーの翻訳者である清水幾多郎は序文でこんな高度な内容が市民向けに話されたことに驚嘆しているし、『量子と渾沌』の紹介でも量子パラドクスが扱われているので驚いている。両著ともに良書として名を残したことも共通だ。
なによりも両方とも、公共の場で「語られた」内容であることを再確認しておきたい。日本の名著や代表的参考書とされる本には、討論会や講演会から本は一つとしてない。
短時間に系統的に物語る、思想や方法を明瞭に伝える、この能力は「英語」の圧倒的なパワーの前に日本語は、ひれ伏すのみなのだ。
いやいや、もののあわれを伝えたり、侘び寂びを言葉少なにつぶやくのは十八番だとは思う。
しかし、いくら世界最短の詩であるといえども「俳句」で戦略や経営を語るのは至難の業だというのは、覆しようのない事実だ。
統治のためのイデア、戦略のためのカテゴリ、指示戦術のための語彙などが現存する言語のなかで最も完備されているということを意味する。英語は「現代を生き抜く」ためには適正言語なのだ。支配者の言語ともいえよう。
つまり、英語は「バベル17」(サミュエル・ディーレニの伝説的SFだ)に近い完全言語であるがゆえに他言語を圧倒しているのだとしておく。
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- 作者: E.H.カー,E.H. Carr,清水幾太郎
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この書も補足すべきだろう。
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