貨幣とは何か。マルクス『資本論』には価値交換の媒介としての貨幣が論じられているけれど、どうやら近頃は交換のために必需品が貨幣となった説は低迷しているようだ。
ファーネスというアメリカ人が20世紀初頭に太平洋のカロリン諸島の一つ、ヤップ島という孤島で奇妙な貨幣制度を発見した。
『ISLAND OF STONE MONEY UAP OF THE CAROLINES』がその報告書だ。誰の目にも止まらなかったこの紹介書。実は、この書物ははるばるとイングランドの世界的経済学者の手元に届く。
ジョン・メイナード・ケインズは『貨幣論』で持ち上げることになる。
通貨について、おそらく、いかなる国民より哲学的な思考をする人々がいることを私たちは学んだ。ヤップ島の慣習は現代の金本位制よりも論理的である
石貨はフェイと呼ばれる。重さは大人一人で持てるものもあれば、4人がかりで運ぶものもあった。フェイは各家庭に無造作に置かれてる。しかし、売買が成立して未払いがあってもフェイが運ばれることはないという。フェイの持ち主は所有者ではない。
フェイの所有権が認めれれば、それで交換は成立するのだ。
さて、面白いのは「海に沈んだフェイ」だ。
要約すると、こうだ。
海岸から100m離れた沖に沈んだフェイは誰も見たものがいない。しかし、その持ち主の資産として、島民は誰もが認めている。その家は資産家なのだ。
まるで、日銀の退蔵紙幣か、大金持ちの銀行通帳のようなものだ。誰もが認めるがゆえに、購買力があり、資産の所有者なのだ。
ケインズの貨幣論:遺憾ながら所有していても読んでいないフェイのような蔵書だ。
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本ブログの元ネタ:エコノミストの方が経済学者よりメッセージが明瞭だ。
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