サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

電子的な読書の短所

 電子化されたテキストの利便性は現代のアジャイルなビジネス環境に最適なのはいうまでない。場所を取らない、再利用の容易さ、検索や共有など多くの理由があるし、それは首肯できるものだ。
 その短所を一つ挙げるとするなら、忘却の速さだ。あえて極言するとコンピュータのRAMに存在する期間しか、人の記憶にも残らない。ショートタームメモリーしか占有できない。
 一画面でデジタル情報を参照しながら作業するのは難しい。とくにコピペができないような場合には悲惨な作業になる。

 それはともかく、しっかりと記憶したいのなら本もしくは印刷物である方が望ましい。
なぜそうなるか?
 自分の仮説は身体所作の有無だ。ページをめくる所作は無意識のシグナルとして読まれた活字とともに心身に浸透する。電子化されたテキストはマウスクリックか、スマホ画面の指先操作で軽やかに記憶の彼方から飛び去る。
 この軽佻さこそデジタルデータの身上であろう。来訪し飛去するだけのもの。
急ぎの電子メールはなぜか一番価値がなくなるのが早い。それが電子化されたテキストの本来のありようではないだろうか?
 ビジネス場面でもショートタームメモリーとしてのみ電子化情報は役に立つ。
 教室にタッチパッドを持ち込んだ学習環境の革新の試みは、効果が出ずじまいだった。
 身体をつかった読書と学習こそが重要なのだ。
 同じことはネット社会での話題の推移についていえる。ちょっと前までの社会的なトピックスはどこへやら。炎上するブログも被害者は別に炎上させた当人たちはその感情の炎は雲散霧消しているだろう。