サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

すべてのハードなスパルタ訓練方式は無駄かも

 経済心理学者のカーネマンの逸話というのは、示唆的だ。

 鬼軍曹のような教官が訓練生を叩き上げる方法はこうだ。

「訓練生がうまく操縦する、賞賛は良い結果をもたらさない」、そして「訓練生が下手に操縦する、教官は訓練生を大声で下等霊長類になぞらえる、訓練生は腕を上げる」

 これによって、ある〈見かけの〉パターンが出現する。怒鳴れば成長し、褒めれば弛むというパターンだ。
おそらくほとんどの教官はその方式が有効だと信じ込む。それがそのまま教練のルールに成り上がってゆくのだ。

カーネマンの研究が明らかにしたのは、上の見せかけパターンが「平均回帰」法則から説明できることだ。もとはゴルトンの遺伝研究から生み出されだ統計則である。高身長の親の子どもたちはそのまま高身長にはならない。平均値に引き寄せられるかのように見えるというヤツである。

 スパルタ教育の仕組みがこうした見せかけパターンの砂上楼閣にあることは十分に可能性がある。鬼のような教官は自分もそう鍛え上げられた。嫁はやがて姑なり、ではないが厳しい躾がその「平均回帰」の結果から、ますます自己正当化されてゆく。それが校風となり社風となり、電**通の過酷労働の「鬼十則」になったりもする。

 いわゆるスポーツやビジネス界の厳しい「伝統」のかなりの成因はこのような統計則上の見せかけにあるのかもしれない。