「商品交換は、共同体の終わるところで、すなわち、共同体が、他の共同体または他の共同体の成員と接触する点に、始まる」『資本論』
マルクスの有名なメッセージであるけれど、これを現代的な視座で統一的に理論化したのは宇野弘蔵とカール・ポランニーだとされている。
ポランニーの論点から始めるとそもそもが、貨幣・労働・土地は市場システムには入っていいなかった。イギリス産業革命からそれらが市場経済に組み込まれた。
つまり、土地から人間が切り離され、労働が自給自足の活動から乖離して、他者へ提供されるべき「商品」となる。それが起きたのが西洋近代である。具体的には19世紀から始まり20世紀初頭に完成したと捉える。
自給自足に近い共同体が分解され、商品交換が始まる、そのプロセスのオリジンが産業革命だったというのがポランニーの主張だ。
「売買されるものはすべて販売のために生産されたものという公準は労働、貨幣、土地には該当しない」と彼は説く。
他方、宇野弘蔵は『資本論』に内在する論理から独自な資本主義経済理論を構築した。マルクス主義者ではないマルクス経済学者とされる。その本義は「労働力商品化」であるとされる。ポランニーと同じく労働力商品なるものは近代的なフィクションであると主張するのは弟子筋の故・玉野井芳郎である。フィクションならそこから脱することも可能であろう。
つまるところ市場経済はすべてを商品化してしまい。21世紀の先進国グループに属する市民たちはそれを毫も疑うことなく唯々諾々と「市場システム」に隷従しているが、それはどこかで道を踏み違えたからに過ぎないのかもしれない、というのが宇野弘蔵とカール・ポランニーの言わんとすることなのだ。
その矛盾は電子マネーやビットコインの時代になることでますます露わになるかもしれない。古代通貨の子安貝から金属貨幣、紙幣となり。兌換紙幣から脱皮してしまい。さらにはビットコインのような電子的シンボルに雲散霧消するマネーとは、いったい実体経済とどんな関係があるかというと、どうもその保証は国家政府からも切り離され、金融関係法人間の連帯保証に置き換わるようだ(ブロック・チェーン)。
しかし、紙幣自体、国家が発行(発行高は国の債務保証を超過)しすぎていて「取り付け騒ぎ」となれば、それらは紙くず同然になるというのは暗黙の秘密なのではないか。
最近読了した『現金の呪い』によれば貨幣は人びとが払うつもりの商品の全量に見合っていない。今やすべての紙幣の発行量の総和は商品の価値の総和を大幅に超過しているのだろう。けれども「貨幣で商品は買えるが商品で貨幣が買えない」という不可逆性により、紙屑化は防がれているのだろう。
基本的な経済人類学の原論。現代社会の成り立ちを振り返るのには必読の研究かな。
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