今月のナショジオ・サイトに『香港にひそむ貧困、1畳間に暮らす人たち』なるレポートが掲載されている。香港の人口は734万人。1平方キロメートル当たりの人口密度は6540人だという。
にも関わらず、確か、先日発表された平均年齢は男女ともに日本を抜いて世界一だったはず。
だがここでも格差社会が進行中だ。
1.4平方メートルに住まう若ものは珍しくない。日本では空き家とか呑気な社会問題が話題だが、世界ではむしろ人口増がとどまるところを知らない。
世界の人口は現在70億人、2050年には92億人となる。
やがて、香港の例は珍しいものではなくなるだろう。それを予兆するかのようなsfがあった。
今は亡きJ.G.バラードの短編『至福千兆』だ。1人の居住空間が4平方メートルの割当となった人口爆発した未来。近くの食堂に通うのさえ命がけ。そこに住まう若ものがふとしたきっかけで6平方メートルのフリースペースを発見したことから起きる悲喜劇。
なんとも息詰まる未来だと当時は感じたが、上の香港の記事を読んだ途端に現実がsfを越えだしたことにめまいを覚えた。バラードの空想小説では基本的人権と最低生活は保証されていたようだが、香港の社会的現実は底辺の存在と人権の軽視に直面している。なんとも重苦しい未来の展望が垂れ込めている。
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ノンフィクション作家のアラン・ワイズマンは『人類の消え去った世界』で有名になったが、近作はヒトだらけの未来だ。
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