サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

微生物が支配する大地

 最近の見積もりでは微生物の数はおよそ5☓10^30
とされる。東洋風の表現でいえば、ざっと5百穣匹おるわけだ。これぞ細菌の見積もりだ。JAMTECの「地球」によるマントル掘削プロジェクトなど、幾つかの海面下数キロにおよぶ地球深部(といっても表面に近いのだが)探査の結果だ。これに比すれば、人類は70億くらいだ、所詮。
 バイオマスという観点でも体重レベルで微生物に負けている。微生物の総重量は5兆トンであり、人類は5億トンである。その活動によるエネルギーや物質循環も微生物が凌駕するのは確からしい(産業革命以降は主客転倒しているかもしれない、悪い方向に)
 これまでは地球規模での物質循環で主役を担っていたのは微生物だった。
小さな土塊を考えてみよう。
 この土塊に宿る生命の輪舞、ざわめき、複雑さと多用さを人類はほんの一部しか理解していない。そのふつつかさ、脆弱さ、変質の速さもようやく認識されだしてきたところだ。そこにひしめく微生物の多さは世界の大都市に比較できよう。一杯のティースプーンに数億の微生物や原生生物、昆虫類、ときには800mもの菌糸が含まれている。それが日干しとか、農薬とかに、塩害などに晒されれば一瞬で、微生物たちは消し飛ぶほどの脆弱な「大都市」だ。
 驚くべきことは現代文明は農業から派生したことである。この数千年のあいだに、定住革命が進んだ背景には農耕への移行がある。遊牧や狩猟が多くの地域で放棄されるか周辺に限定されて穀類を中心とする農業が拡大し、古代文明はいずれも農民と耕地に依存するものとして成立した。
ヘロドトスが最初の歴史書に「エジプトはナイルの賜物」と記したように、肥沃な土から生じたのだ。
 聖書にあるようにアダムは土塊から取り出された。今でも土から人間は作られている。もちろん農耕と牧畜を経由してだが。もちろん、海洋民族モーケンはそうではないかもしれない。倭寇をうんだ古代日本でも事情はやや異なるだろうが、今日では栄養源の海洋依存性は少しばかりだろう。
 土塊の産物である人類はその土塊を理解できていない。また、その無知のゆえに土壌破壊が進行しているというのは、ここでの主張の枠外にある。
 土塊の主役は微生物である。大地における物質循環の主導権も微生物にあった。それが、ここ2百年ほどは人類によって大いなる擾乱を受けている。この擾乱の期間は永続しないのは明らかだと思われる。存在基盤を破壊して持続する存在はありえないからだ。
 農学や有機農法はそれを阻止できるのであろうか?
というのが『微生物の地球化学』と『生きている土壌』の読後感である。

せっかく所持しているのでリストに入れておこう。

サイエンスZERO」 高温高圧環境での微生物を探る。