現代科学以前に原子論は三箇所で独立に発生したとされる。古代ギリシアとインドおよび(古代ではないが)イスラムである。
イスラムの原子論は唯一神としてのアッラーの絶対性を合理化するために生まれたと井筒俊彦は説く。
原子の多数性のために因果性ではなく偶然だけが事象の発生を決める。神は奇跡をどこでも起こせるのだ。
なかんか壮大な論理である。ギリシアの原子論は神を排除したが、アル・ガザーリーによるイスラム原子論は神を崇拝するためにうまれたのだ。
まったく関係ない話だが、元素記号はアルファベットで記される。アルファベット、つまり表音文字がなけば原子論も生じ得なかったという説がある。
アホな!といわんといて欲しいなー。
何を隠そう自分が立てた説なのだから。
思考法としての表音文字体系が原子論にマッチしていたというのは、案外いい線ついているのかもしれない。
というのは、ギリシアもインドもイスラムも表音文字の言語を使っていた民族なのだ。古代文明の雄である中国には原子論は清代末期に至るまでなかったのだ(それも輸入版だった)
ともあれイスラムの原子論はもっと検討していもいいテーマではないだろうか。
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