マイクロバイオームとか腸内細菌叢とか、腸内フローラとかいうのが最近、目につく。
ここでマイクロバイオームはヒトを取巻く微生物の生態系である。
例えば2月22日放送予定のNHKスペシャル『腸内フローラ 解明!驚異の細菌パワー』では、こう紹介されている。
腸の中には実に100兆匹以上、数百種類もの細菌が住んでいて、その細菌の出す物質が、私達の美容や健康に様々な影響を及ぼしていることが分かってきました。
100兆というのは、まあ、それは腸内細菌の専門家も異口同音に言っている。人体の細胞数60兆より多いのである。
この根拠は腸壁の表面積が体表の数倍であることや腸の長さが、小腸が6〜7m、大腸が1.6〜1.8mということからも推測はできる。それに大便は目に見える大腸菌の塊といっていいというのは光岡先生の驚きの『腸内細菌の話』で度肝を抜かれたものだ。
つまり、数のうえで言えば人間は腸内細菌の容器としての存在理由がすべてであるという実存主義者を唸らせる指摘もできるのだ。
ノーベル生理学賞受賞者のレーダーバーグは「ヒトはヒトゲノムとヒト常在菌叢ゲノムからなる超有機体である」としているというのは裏づけとなろう。
現代文明なんて腸内細菌の発展を促進するための仕掛けでしかないのだろうと開き直りもできる。
どんな分布かを簡単に示したのが下図である。
発酵食品は腸内フローラの善玉性を抜群に改善する。ヨーグルトもいいが、それは動物性乳酸菌である。それよりも腸の免疫機能をより良くすのが植物性乳酸菌であるという。実はこの二種の乳酸菌自体の差はない。
それは和食の漬物や味噌、醤油に多く含まれる。和食の発酵食品と一体的に摂取されるのが「植物性乳酸菌」だというわけだ。
大腸がんの増大は、ニッポンの食習慣がこうした伝統食から遠ざかることにより進行しているというのは、きわめて妥当な疫学的結論だろう。
ヒトのマイクロバイオームの細菌は1000兆ともいう。種類では1000種類以上だ。フランスのラブレーの巨人物語に人体の村々の探検の逸話があるが、それも絵空事とはいえないほどの多様な小宇宙が体内と体表に存在する。
ヒトの常在菌は近代化による衛生状態の「改善」により善玉菌を含めて激変してきていると『日経サイエンス2012年10月号』の特集記事では警告する。今や、細菌が免疫系を支えているという事実が明確になりつつある。
その結果、人体の細菌の入れ替えで自己免疫系の狂いが種々のアレルギーの原因となっている可能性があるのだ。
【参考資料】
この巻の特集のメインは腸内の細菌生態系が人体との深い関係、脳と腸の関係すらもある、ことをレポート。
バクテロイデス・フラジリスは腸内に常在する細菌だが、大腸炎の発生をT
細胞と協調することで抑制する。
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