知らないでいたのだが、かなり多くの樹木の根は菌と共生している。マメ科の植物が菌類と共生して大気から窒素を吸収するのは有名だが、菌類と共生する樹木は多く、ブナ、オーク、マツなどはそうである。
根の一部となった菌糸を通じて、水分やリン酸などを吸収しているという。また、土壌中の毒物からの防御機能も兼ねている。
樹木学の権威のピーター・トーマスの指摘をまとめておこう。
針葉樹は外生菌根をもつことが多い。根毛を喪失した替わりに菌糸が網状の土壌をカバーする(ハルテッヒ網)
こうなると土壌の探索と根の成長誘導は樹木自身ではなく菌糸が代行することになる。
実に驚いたことに、外生菌根を通じて異種の樹木間で養分の移動が起きる。D.W.ウォルフによれば「ある生態系ではこのようなネットワークを通した資源の共有分が非常に大きいので植物社会が一つのギルドとなる」
樹木はこうした共生する菌に栄養を供給してもいる。おそらく光合成で生み出した糖類を与える替わりに自分ではエられない水分や養分、免疫機能などを受け取っているのだろう。
面白いのは人の大腸内で起きている菌類との共生に似ていることだ。D.モンゴメリーと自分の見解はそこで一致したといえる。D.モンゴメリーはれっきとした研究者であり、マッカーサー・フェローに選ばれるほどの天才だ。
彼の主張は『土と内臓』に表明されている。
「根は腸であり腸は根なのだ!」
樹木の根も人の腸も、細菌を通じて養分を効率よく吸収し、天敵となる悪性の侵入物から守っている。裏返しにされた内宇宙が腸なのだ。
また、腸内細菌と土壌細菌の多くは共通して腐生菌の系統にあり、植物の根をひっくり返すと消化管に似ているとまで主張している。随分と極端な類比であるのは間違いない。
しかし、人が食べたものは土壌に生える植物からの贈り物とするなら、その根は植物の生きるための滋養分を生み出し、同様に腸は滋養分を存分に吸収するための他方の仕組みと言えないこともない。
土から離れてしまった存在となった人類は、できの悪いミミズのような半端ものなのかもしれない。
【参考書】
- 作者: デヴィッド・W・ウォルフ,長野敬,赤松眞紀
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- 作者: デイビッド・モントゴメリー,アン・ビクレー,片岡夏実
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- 作者: ルース・ドフリース,小川敏子
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