サイエンスとサピエンス

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集合知性と群体行動

 アメリカはペンシルバニア大学のロボット学の教授 Vijay KumarのTED『Robots that fly...and cooperate』を観た。
流行りのドローンの紹介かと思っていると見事に裏切られる。一種の集団同期行動ができるようにプログラムされた自動運動ドローン集団の紹介なのだ。

どうやら、軍関係予算による開発であり、群体運動アプリケーションであり、そのデモンストレーションなのだ。

 実際にこのインド人は1990年台にロボットの三次元フォーメーション運動の数学的問題を解いた。これは個体が相互作用しながら大気中で動的安定性を保持しつつ、長方形に整列するとかA地点からB地点に最短距離で移動するなど複雑な多体問題になる。これをドローンで実装したのだ。ドローンには特殊なマイコンチップが埋め込まれていることは言うまでもない。
彼の研究室のWeb「Vijay Kumar Lab」で最新の研究を確かめてほしい。


ところで、日本でも大ヒットしたディズニーの3D CGアニメ『ベイマックス 原題:Big Hero 6 』で主人公ヒロの発明した「マイクロボット」は、この発明にインスパイアされたと考えてもいいだろう。


このような群体行動可能なロボットと人工知能の結びつきは、ポーランドのSF作家&思想家のレムの作品『砂漠の惑星 原題:無敵』の世界を連想させる。そこで人類が遭遇したのは半ば半自動的に集合行動する昆虫型ロボットである。
 コミュニケーション不可能な懸絶した集合知性体と人類は戦うのだ。その苛烈な戦闘シーンは鮮烈だった。
 ディープスペースを探査する高度なテクノロジーを掌中にした人類と数量に勝る昆虫型ロボットの対比は、その後のレムの思想の習熟の過程で後者が未来を象徴する存在になる。
Vijay Kumarの発明はそうした異形の知性体の支配への第一歩かもしれない。

砂漠の惑星 (ハヤカワ文庫 SF1566)

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