サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

西暦774年 何も起きなかった

 ある年から前の記憶や記録が吹っ飛んだとしたら、かなりのドタバタになるだろう。
西暦774年にそれが起きたわけではないのであるが、地球規模での宇宙線の強度が平均の20倍になったことが知られている。
 「774–775 carbon-14 spike」と呼ばれるイベントは日本の名大チームが屋久杉から発見したが、ドイツ・ロシア・アメリカ・ニュージーランドでも同じ現象が発見されているのだ。

 原因としては、太陽活動の異常やガンマ線バーストなど諸説あるが決定的ではない。

 自分としては、歴史になにか痕跡がないかどうかが気になる。
 西暦774年−775年は日本史では奈良時代末期、ヨーロッパではシャルルマーニュ大帝の時代だ。東ローマ帝国はぎりぎり頑張ってた。大戦争も大虐殺も、疫病や飢饉も大地震も火山爆発さえなかった。東西ともに平穏無事な年であり、取り立てて大事件が起きているわけでもない。
 なにも起きていないのが不思議なくらいだ。ひょっとしたらその年に起きたことを人類がみんなともども忘れたのかもしれない。
 とはいえ、20倍の宇宙線被爆はそれほどのダメージとはいえない。高度10キロを飛行すると宇宙線の量は地表の100倍になるという。つまり、20倍ではそれほどのダメージではなかったかもしれないのだ。少なくとも人体に関しては。
 とはいえC14の異常は年代測定法への影響が懸念される。775 carbon-14 spikeは1000年に一回程度、ズレが起きる可能性を示唆した。では一万年とか十万年ではどうだろう?
 そんな昔については、年輪との照合なんかできないだろう。C14は指数関数的に単調減少しなくなるので、測定された年代に跳びができるんではないだろうか。
 それが記録のgapになるという最初の一文の意味だ。