冬場になると連日、お隣の中国ではPM2.5の警報が乱れ飛ぶ。北京、大連、上海など大都市圏は霧の都と化す。
それは1960年代の日本の工業都市を思わせる。たぶん、規模や濃度はそれ以上であろう。
20世紀中頃のイギリスでも「ロンドンスモッグ」(1952年)で10日間で一万人が死去した事件は、中国を誹謗する前に、思い出しておきたい。ただし、イギリス政府は直ちに対策を施している。
PM2.5への注目度が上昇したのは1997年にEPA(米国環境保護庁)がPM2.5の新しい規制を制定してからだ。大気1立方メートルでの塵が25マイクログラム以下というのが基準だ。
中国の健康被害も公表値はないものの恐るべき数値、一説では年間100万人ともいう、であろう。人民政府は無策のままではいないが、北京オリンピックの頃からこれまで改善されたようには思えない。
さて、日本への影響であるけれど、日本天気協会の提供するPM2.5分布予測を注視していれば、その影響はある程度わかる。ひどい時は西日本や沖縄方面(沖縄はかなり実害があるような感じがする)を覆うようだ。
それでも中国本土の有り様よりはましだと感じ、対岸の火事視する向きもあろう。
しかしながら、日本のガン統計は気になる数字を示している。
下図は「がん情報サービス」から生成した日本人の部位別ガン死亡率のグラフであります。1958年から2013年までの年次推移を表示している。
有名な胃がんの下降傾向と大腸がんの上昇に加えて、肺がんの大躍進が目立つ。肺がんの最大の元凶であったタバコは今や、喫煙率が減り、禁煙分煙が習慣化されているのに、この有り様なのであります。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は肺がんの前駆症状である。その死亡率は世界の死亡統計では第三位になると云われている。
慢性閉塞性肺疾患が多発するのは喫煙などの煙害もあろうが、どうやらPM2.5も犯人の一人といっていいのではないだろうか?
実際には用意周到な疫学調査で、空気1立方メートルあたり10マイクログラム「ダスト」が増えれば、死亡率は0.5〜1%上昇するといことが云われている。その死因の一番は肺閉塞であるのはもちろんだが、うっ血性心不全や不整脈、冠状静脈での死因も増える。なぜ、心臓病での死が増えるかは謎とされている。
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下記の書籍の第8章の「肺に降り積もる塵」という節は必読であろう。
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