サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

島嶼化と軽自動車

 21世紀になって発見された現生人類の兄弟分ホモ・フローレシエンシスはホビットという愛称がついた。大人でも150センチに満たない。彼らはほんの12000年前まではフローレンス島というインドネシア諸島の小島に生きていた。
 これを島嶼化という。生物資源が限られた島では矮小化する。小型化する。日本人も鎖国中にかなり矮小化したとされる。また、朝鮮半島人に比べて小身であった。それ故に「倭人」矮小なる人びとと呼ばれた。

 ともかくも日本の自動車でも同じ現象があるといいたい。軽自動車である。
 実はお隣の中国では小型車より大型車のほうが人気がある。アメリカでもそうだ。
 これは大型車のほうが、長距離移動にもラクであること。大きさはまちなかや市街地での走行の障碍とはなりえないことを示すのだろう。他方、島国日本では狭い道路や山道が多く、市内では限られたスペースに駐車することなどの狭さゆえの諸事情もあり、矮小化したクルマが受け入れられた。軽薄短小化の一例だろう。しかし、島嶼生物学的に自動車を考察するのも別な意味で示唆的かと思う。

 これは李御寧の『縮み志向の日本人』を生物学的に解釈したものと言えなくもない。周知のように本書で商品から詩歌、言葉まで李は縮小均衡に向かう日本人の心性を論った。一本歯の下駄や俳句の縮減表現、能の簡素な所作などもそうだというのだ。
 言葉の切り詰めは島嶼化かどうかというのは、満更でも馬鹿げていない質問かもしれぬ。

生物の大きさとかたち―サイズの生物学 (SAライブラリー)

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「縮み」志向の日本人 (講談社学術文庫)

「縮み」志向の日本人 (講談社学術文庫)