世界の海外旅行客は1990年は4億人だった。それが2020年には14億人になるとされる。
これほど拡大している要因の一つはエアラインの燃料の安さだ。自動車用のガソリンが高騰してもエアラインの旅行代はそれほど変動せずツアー価格は安価なままである。
その一つの要因は1944年のICAOの条約で航空燃料への非課税を禁止しているためだ。排出権取引もここには手を付けられない。世界の民衆やジャーナリストも旅行代金に値上がりにつながるような規制や課金には緘黙症になるわけだ。
でも、輸送手段としてエアラインは褒められた手段ではない。
エアラインは交通手段のなかで最もエネルギー効率が悪く、しかも、二酸化炭素垂れ流し状態で管理されていないのだ。
アメリカのように国内の主要移動手段がエアラインの国などは語るに落ちたというべきだろう。
おまけに、先進国の首脳は誰も文句を言わないが、アメリカ軍の燃料消費は半端ないという。B52爆撃機は12000リットル/時間を費やす。F15戦闘機はかわいいもので7000リットル/時間だ。2006年のアメリカ空軍の消費した燃料は26億ガロンだが、第二次大戦中にアメリカ国外で消費した燃料総量とほぼ同等だという。
別にこれはアメリカに限ったことではない。軍事大国は毎年、似たようなオーダーの燃料を非経済活動(生産につながらない活動)に費やしているわけである。
ナニワトモアレ、地球温暖化防止を心がけるにはエアライン利用も極力控えるべきだし、周りにもそう働きかけすべきなのだろう。でも、専門家もジャーナリストや文化人たちも誰もそんなことはおくびにも出さない。
そりゃそうでしょう。
みんな大好き海外旅行!世界の平和と友好の礎です!ってね。
大きなジレンマですわ。
【参考資料】
- 作者: クリストフ・ボヌイユ,ジャン=バティスト・フレソズ,野坂しおり
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本書は「思想史」を扱っているが、フランス製だけであってアメリカには十分批判的である。それも科学思想畑の著者なので、「事実」に基づいてファクトを集めている。凡百の環境危機の本を超えた良書だ。エアラインや軍事の二酸化炭素排出量の指摘もこの本でしか見たことない。まあ、横並びのブログしかないネットの世界とは違うのが出版物ワールドなのでしょう。
- 作者: 国土交通省観光庁
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