サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

2011-01-01から1年間の記事一覧

君は'Google Tech Talks'を見たか

君は'Google Tech Talks'なるものを公開されているのを知るや。天下無双のGoogleは社員研修もピカ一というわけだ。 社員を含む一流講師の知的刺激に富んだ社内講演をYouTubeに流すのはさすが余裕綽々である。 しかも、かなり興味深いラインナップであります…

「シュレディンガーの鳥」を読んでも

日経サイエンス10月号所載の『シュレディンガーの鳥を探して』は考えるサルに久々にしてくれた。副題が「生命の中の量子世界」とくる。 マクロ系にも量子もつれがあると物理学者たちは信じ出している。原子や分子レベルで「不気味な遠隔作用」があるのは証明…

ジョナサン・スウィフトの凄さ

英文学者としての夏目漱石が一目も二目もおいた作家というとジョナサン・スウィフトに指を折る事になろう。 彼の東大での英文学講義録『文学評論』でスウィフトに最大のページを割いているのがその証拠だ。高い芸術性の評価というのではないかもしれないが、…

ナンシー・クレス『ベガーズ・イン・スペイン』のアメリカ

女流SF作家がいきなりヒューゴー賞ネビュラ賞スタージョン記念賞を総なめにするのは、珍しいかもしれない。そのSF作家とはナンシー・クレスだ。 それほどまでに、ナンシー・クレスのこの『ベガーズ・イン・スペイン』が投げかけている問は、アメリカ人に…

ナショナルキッド

意味もわからずカッコいいんじゃないでしょうかね。キッドのトサカみたいな頭部の出っ張りはウルトラマンまで引き継がれるようですな。 アンドロメダ生まれで日本育ちで松下電器が後援していたのであります。「ナショナルキッド」の華麗にしてレトロなエンデ…

重厚長大な装置産業=グーグル

世の中、スマホだのクラウドだの騒いでいる。その立役者の一人だったジョブスは端末側のパイオニアだった。マックだのiPADやiPhoneだのは彼の存在によって生を受けた。 ここではもう一つの立役者、グーグルについて考えたことをメモる。 まずは、この企業、…

国勢スケーリングの概説

前のブログで述べたのことを再説してみたい。 「交通網のスケーリングによる国家力の比較」 「主要国の鉄道力」 で使ったスケーリングの有効性を確認するためであります。 国家の地理的な大きさを適切な大きさに変換する。それを国勢スケーリングとしていま…

考古学者らの非現実性の由来

考古学の仕事の大半が墓あさりである。あるいは廃墟の最果てをほじくり出す作業である。死者を弔うというより死者を探り当て想像するのが彼らの仕事なのだ。けれども墓荒しという罪悪感は彼らにはない。 歴史家との違いは土中に証拠を求めるか、それだけでは…

八木秀次と湯川秀樹

八木秀次と湯川秀樹の関係をメモしておこう。 八木アンテナで世界の電子技術者たちを唸らせた八木秀次は、本来は工学者である。 だが、その実績を長岡半太郎から買われ、阪大の理学部を創設の中心人物となる。長岡半太郎は物理学会のドンだった。日本の第一…

GDPの仕分け

経済成長の指標はGDPという決まりごとになっている。だがどうもスラッファの小言のようにゴミを入れればゴミしか出ない統計の一つという懸念もないとはいえない。 そのことについての、切れ切れの情報と意見をまとめおく。 積年の疑問は医療費だ。可逆性…

考古学の楽しい読み物

かつてツェーラムの『神・墓・学者』が世界的なブームを巻き起こしたことがある。 エジプト、メソポタミア、マヤなど名だたる発掘と成果をイマジネーション豊かに読者に伝えて、世界史の基礎知識を塗り替えるだけでなく、考古学の楽しみを余すところ無く語っ…

渡来人 秦氏のことなど

古代の豪族、秦氏はどこから来たか。 中学生の同窓で秦という友人がいた。中華料理屋の息子だったのを記憶している。 そういうわけで、個人的にかなり興味あるテーマだ。 秦氏自身の系譜によると秦の貴族の末裔ということであるが、現代の歴史家は誰も真に受…

「パワー・オブ・テン」への補足

寸法の規模を10の指数で表して、天空から原子までのその範囲を映像化した名作は チャールズ&レイ・イームズの『パワー・オブ・テン』であります。 ご存知ない方はとくと鑑賞していただいて、と。 ここでは重さの規模をそれに追加したらば、どうなるかをグ…

玉門関の廃墟

漢詩やシルクロードで定番の玉門関の現状をGoogleMapで見てみると... オヤオヤ、本当に廃墟であります。 モンゴルの騎馬民族の時代にシルクロードの伝統はすべて根絶やしにされたそうですが、玉門関ですら、その例外ではないらしい。大きな地図で見る

数学者ワイエルシュトラスの生

19世紀のドイツの数学者ワイエルシュトラスは地味だが重要な業績をたくさん残している。 函数論や楕円関数において彼の業績はふんだんに引用される。 ガロアやアーベルほどロマンチックな生涯ではなかったかもしれないけれど、幾分特徴的な人生を、ある意味…

愛媛県岩屋寺のこと

愛媛県岩屋寺は四国遍路第四十五番札所である。一遍上人の遍歴を絵画とした『一遍聖絵』にgagaたる岩山を背景に描かれている中世以来の山寺である。 なぜ岩屋寺か? 図画にあるその山容が面白いのである。聖絵そのものの奇岩がある。 そして、一遍上人が霊夢…

ノーベル賞の出身地の国内分布

暇つぶしではないけれども、暇だからノーベル賞(科学三賞:物理、生理医学、化学)の出身地を調べてみた。西日本が飛び抜けて多いようなイメージは違ってました。 中部地方が西日本と同格というか、密度的には日本最大なのですねえ。偉いぞ中部! とりわけ…

気になる言葉「気」

日本語の「気」はいたるところで顔をのぞかせる。ひとたび気になりだすと、気が散るくらいに気になる気のつく言葉がゴロゴロしている。 「気をつけてね」と何の気なしに送る言葉に、こもる気合がある。家人が「気」をともなうことで、何故安全安心になるので…

2009年の国内ガン死亡を読む

国立がん研究センターの新しい統計をもとに国内のガン死亡数の概要把握を試みます。ここでの数値は、2009年の「全がん死亡数・粗死亡率・年齢調整死亡率」を利用しています。 男女別、年代別(十歳区分)、県別に死亡数が下表となります。年間34万人が亡くな…

20世紀後半の論理哲学者クワイン

ラッセルが「技巧は最高だが論理的常識に乏しい」と賞めた(?)クワインの インタビュー映像。あのブライアン・マギーがインタビュアーである。そのクワインも故人となりました。 デュエム=クワインテーゼは刺激的で、素敵でしたが。

正多角形な城塞都市 パルマノヴァ

イタリアに典型的で典雅な城塞都市「パルマノヴァ」が現存する。16世紀の都市だ。 進化した砲術への幾何学的防衛術として、生まれた都市だ。別の文献では地相術によって構想されたとしている。 遠来の客には美しくも奇妙な都市であるが、住民には迷惑な都…

千葉県の地名の古代

千葉県、つまり房総半島は古代にあっては拓けた土地でありました。上総、下総、安房と3つにわかれていたので、地方豪族の勢力圏もそれだけ細分化されていたのでしょう。鎌倉時代以前には武蔵や相模などは、千葉に比べれば、ど田舎だったんじゃないですか。 …

1930年代ポーランド数学者のたまり場

1930年代ポーランド数学者のたまり場とくれば「スコティッシュ・カフェ」です。バナッハ、マズール、シェルピンスキー、ウラム、シュライエルらルヴフ学派の数学者たちが集った。 ルヴフ学派の数学者の談論風発の場だったのです。 そして、ここで議論された…

ウィーンに同時期に生きたポパーとウィトゲンシュタイン

面白い映像があった「ウィトゲンシュタインとポパー」 ポパーの自伝にちょこっと出てくる有名なウィトゲンシュタインとの正面きっての 対談=対決は、いまだに興味深い。師匠のバートランド・ラッセルの目前で行われたことに鍵があるとエドモンドは指摘する…

輸送のエネルギー効率性比較の根拠

日本のGDPの一割はヒトとモノの物流が占めている。 ある意味、国の競争力の根幹を物流が担っていると言ってもよいであろう。そして、その運行システムの頑健性(事故災害への強さ)や迅速性(輸送速度と頻度)、正確さ(時間通りの運送)では、日本は国際的…

主要国の鉄道力を比較する

前のブログ「交通網のスケーリングによる国家比較」に引き続き主要国(日本、アメリカ合衆国、中国、ドイツ、イギリス、韓国)の鉄道力をより詳細に比較してみよう。 ここでも国勢スケーリングにより無次元化した指標で比較します。 国勢スケーリングとは国…

第五世代コンピュータの夢

1980年代に経済大国となった日本のもろくも儚く過ぎ去った「夢」として第5世代コンピュータの華々しさは、後の世の語りぐさにすらならなかった。 第五世代コンピュータとは何だったか。 要約しておく。1982年通産省の肝いりで開始された国家プロジ…

交通網のスケーリングによる国家比較

交通網、鉄道総延長や舗装道路総延長を国家どうしで比較してみました。その場合に 役に立つのはスケーリング概念です。 要するに、国の地理的な大きさを特徴づける「長さ」を取り出して、無次元数をつくるのです。 交通網を無次元化するのに、ここでは、国土…

荘子の末法思想=五末の説

荘子の五末の説は示唆に富む。 末法思想ではないけれど、世につれ人につれ、世情が衰退する。その理を荘子は5つの徴で解き明かすのである。一に、武力を用いる徳の末。力に訴えることを制度化するのは、人徳が衰えた兆しだ。 二に、賞罰を用いる教の末。金…

レフ・ランダウについての覚え書き

ソ連有数の理論物理学者であったランダウは熱烈なトロツキストであった。 反政府的な活動で投獄されたが、奇跡的に放免されている。スターリン体制下で投獄されて放免されたケースはきわめてまれだ。しかも彼の場合には、ほんとうに有罪だったのだ。反スター…