サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

2014-01-01から1年間の記事一覧

ジェームズ・タレルのサイエンス・アート

光の環境芸術家ジェームズ・タレルの代表作『ローデン・クレーター』 アリゾナ州の実物クレーターの環境破壊による環境芸術だ。 規模の大きさは地図でわかろう。日本にも直島をはじめ幾つか作品が置かれている。大きな地図で見る 1980年代に坂根厳夫がま…

盲(めしい)た賢者 ボルヘスの語り

『七つの夜』なる講演を、老賢者ボルヘスの語りをじかに聴きにいこう。 1977年77歳の文学の泰斗が、「神曲」「悪夢」「千一夜物語」「仏教」「詩」「カバラ」「盲目」について語る名講演。南米アルゼンチンにあって東洋と西洋の文化を通観した図書館司…

地球重力場の微小変動を観測し続ける衛星 GRACE

GRACE(Gravity Recovery and Climate Experiment)はNASAとドイツ航空宇宙センター(DLR)が打ち上げた地表の観測衛星だ。2002年に打ち上げ、現在でも観測を継続中である。 その著しい結果が地表の重力場の経年変化を可視化できることである。 公式サイトGRACE…

中谷宇吉郎と軍事研究

寺田一門(寺田寅彦の学風を嗣ぐ物理学者)のうち、一番師匠に近いのは中谷宇吉郎であろう。本来なら、また、戦争がなければ先端であった原子物理などの研究で、一流の業績を残したのであろうが、時代がそうはさせなかった。 当時、開学したばかりの北大の理…

史上最大の自然科学者

それはアリストテレスであろうと言われている。 ファリントンを引用する。 生物学的著作では、アリストテレスは科学に対して偉大な貢献をした。それは個人で科学に対して成し得た最大の貢献である ダーウィンが後世に「リンネを先生と思い尊敬してきたが、ア…

今を生きる古代宗教ジャイナ教

ジャイナ教は日本ではあまり知られていない。 現代のインドではヒンズー教が圧倒的であるが、それでも500万人の信者が残る古代宗教である。「古代」というのもブッダと同じ時代のジナ(マハーヴィーラ)により創唱されたからだ。ついでに言えば南方熊楠翁…

地球上のイベントの連関の取り出し例

ガソリン代がこのところ値上がり気味である。ジリジリと値が上がり、165円になった。 ウクライナ危機が影響しているとメディアは報じているが、この4年間で原油価格は高いままであるのも事実だ。 WTIの年次推移を示しておこう。縦軸は1バレル当たりのド…

荘子と木星の大赤斑

サイエンス・ニュースで木星の大赤斑がこの百年で大幅に縮小したと報じていた。ナショジオのサイトに写真がある。 その大きさは約40,000km × 14,000kmであり、横幅が地球3個分であった。地上の望遠鏡からも観測可能な大きさだ。 それが地球1個分までシュリ…

哺乳類の種の消滅は人類の消滅のバロメータ

明らかな事実として、哺乳類の種の消滅は文明、「近代」文明の進展とともに加速してきている。 一八〇一年から一八五〇年までの五〇年間に11種が絶減し、一九〇一年から一九四四年までの四四年間に43種が絶減している。四年半に1種となり、一年と少しで…

他人の耳朶

ラファティの形而上学的SFに『他人の目』という好編があったように、他人の耳朶を装着するというのが実現可能だ。 何を戯言を!という前に、その説明をしておこう。 ダーウィンが指摘しているように、人間の耳(外耳)の形状は一人ひとり異なる。この形状…

辞書の秩序とは

アルファベット順に単語を並べるという辞書の規則が生まれたのは1604年、ロバート・コードリーによる『アルファベット順単語表』が刊行された時だ。 アルファベットはギリシア文字のαとβを語源としている。 この単語表には2500語が定義されていると…

医の倫理の普遍性

その昔、ヒポクラテスの誓いを岩波文庫で読んだ時、ひどく感心した記憶がある。古典ギリシア期において、高い道徳意識で施療看病にあたった医療集団がいたことへの驚嘆である。彼らはギルドのような集団を組んでいた。コス島のヒポクラテス一派である。 その…

キマティークの鑑賞

振動に不思議を感じる。ハンス・イェンニのフィルムを鑑賞してみようか。 クラドーニ図形から開始される。ルドルフ・シュタイナーの影響が感じられる。 他にも幾つか紹介映像がある。 哲学者中村雄二郎の晩期の代表作ではこのような「かたち」の神秘に没入し…

情報は物理的な実在なの?

ビットコインが社会問題になっている。しかし、多くの人びとの銀行貯金の金額は、ほぼコンピュータ上のビットの列でしかないのは隠された真実だろう。貨幣はもはや信用を伴う情報の一種でしかない。 量子力学の情報科学的な研究は最先端研究の一翼を担ってい…

M.D.コウ 『マヤ文字解読』を読む

M.D.コウはマヤ考古学の世界的権威と言っても過言ではないだろう。もう、半世紀以上マヤ文明の歴史的解明に第一線で、挑み続けている。 「歴史」といえるようになったのは、マヤ文字がほぼ解読できるようになったからだ。かつてはその奇怪な象形文字は多くの…

先人の知恵と原子力教団

田中丘隅というと江戸時代の人で、多摩川周辺の地域の偉人ということになろうか。 川崎市にとっては地域史の定番となる人である。もとは八王子の絹商人の末っ子で、行商人だった。それが川崎の地元の名家田中家を嗣ぐことになり、大名行列の宿場町で助郷など…

続 巨大地震の覚醒

南米チリのマグニチュード8.2の地震は、幸い大きな被害を太平洋諸国にもたらしはしなかった。 しかし、2014年になってからも太平洋のプレート活動は活発であることを示したといえよう。 以前のブログで提示したグラフを再掲しておく。 M>8の地震の1970年以…

金沢城のヒキガエル

『金沢城のヒキガエル』はヒキガエルの集団の興亡が描かれた生態学の研究書である。金沢城の本丸という比較的周囲の環境から隔絶した境界内でヒキガエルの個体識別と観察を9年間続けた記録でもある。 その数、実に1526匹。 副題の「競争なき社会に生き…

カサの空気力学

この頃、季節によならない暴風がかなりの頻度で多発するようになった。傘がイカれる可能性も高まるわけだ。 しかしながら、web上では強い風に吹かれた時にどのような力が、傘(アンブレラ)に作用するかの説明は殆ど無いようだ。 オチョコになりにくい注…

人間原理ではない観測者の存在原理

この文明がいまあるのは「たまたま」だけど、それを理解する観測者がいるのは、そのたまたまのおかげ? 文明の興亡というものを客観的に把握する手立てを現代人は保持するに至った。それは偶然ではないだろう。 知性を持ち緊密に組織化された社会システムを…

上りは階段、下りはスロープ

「上りは階段、下りはスロープ(坂道)」とは、ロゲルギストのエッセイでもかなり実用的な事例です。 無駄な力を使うことなく上下するには、上りには階段を使うのがよく、下りにはスロープがいいという意味です。 上りにスロープを使うと抗力が斜面に垂直に…

STAP細胞の研究疑惑に関する論点

現時点でますます論文信ぴょう性の疑惑が高まりつつあるSTAP細胞研究であるが、幾つか関係する情報をまとめておく。どちらかと言えば、研究者を擁護する論拠となるかもしれないが、彼らの研究の是非については、とくに意見はないとしておく。 二つほど関連す…

マレーシア航空機の失踪とベイズ推計

世界中の耳目を集めてるマレーシア・エアラインの失踪事件。もう3日以上経過するのに有力な情報がほぼ皆無。 どこに消えたか370便? 何にも情報がなけれど、何か主観的に推定したいというので原子力潜水艦スコーピオンの探索のときに役立ったというベイズ推…

瞬間の志向性増幅

アナログ時計から時刻を読もうとすると、ときおり、秒針が止まって見えることがある。 対象に注意を向けたその瞬間に、時間感覚が変化するのだと解釈してきた。 これが如実に知覚されるのが事故に遭遇するときであろう。車や人の動きがスローモーになる。こ…

PETボトルの発明者の素顔

そこらじゅうに溢れかえる大量消費製品にうちでも、ヒトキワ目立つのが「ペットボトル」であろうか。 ペットボトルのペットとはPET=ポリエチレンテレフタレート樹脂のことであるのは、雑学ファンなら十八番の知識であろう。 そのオリジンはデュポン社(米)…

小惑星の直径に関して調べてみた

小惑星については「はやぶさ」の活躍で、日本でも知名度アップした。 それはともかく、発見年と小惑星の直径(m)の散布図から行こう! 横軸は西暦である。18世紀のセレスの発見からスタートする。 ここで使用した小惑星情報には52000個の天体がある…

史上もっとも悼まれた虫

鳥羽水族館のダイオウグソクムシ(Bathynomus giganteus)No.1は1869日の厳しい絶食の末に、2014年2月14日に昇天した。 想像するに、ダイオウグソクムシNo.1は飼育環境に対するストレスの結果、拒食症になったのだろう。そうして、あまりに悲しい結末を…

太陽系の惑星の衛星の数

知らぬ間に、惑星の衛星数はど〜んと増えている。 太陽系全体では159個あるのだ。それをリストしておこう。 惑星ごとの衛星数はこうなる。 巨大惑星である木星の従者が一番多いのは小惑星帯に近いからでもあろう。 地球 1, 火星 2, 木星 62, 土星 56, 天…

ガリレオ・ガリレイのミームの由来についてのファンタジー

ガリレオ・ガリレイから近代科学が本格的に始動した。その歴史的な背景は、当然のごとく、16世紀イタリア・ルネサンスに精神の拠り所をおいてもよいだろう。 ここでも、例によって違う事柄から記述を始める。ヘレニズム期末期に古代世界最大の数理物理学者…

自然科学が宗教を否定しさることの困難性

自然科学は宗教を否定しさることは困難であろう。例えば原子論に聖なるものの否定原理を求めてみてもそれは対象が異なるレベルにあるため、聖性の否定の説明とはならない。 原子論あるいは自然科学的世界観はその説明範囲を限定した場合にのみ有効である。そ…