サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

2017-01-01から1年間の記事一覧

香港の一畳間とバラードの短編

今月のナショジオ・サイトに『香港にひそむ貧困、1畳間に暮らす人たち』なるレポートが掲載されている。香港の人口は734万人。1平方キロメートル当たりの人口密度は6540人だという。 にも関わらず、確か、先日発表された平均年齢は男女ともに日本を抜いて世…

21世紀のリベラリズムの一斉退潮

先進国では軒並みリベラリズムが退却してきている。アメリカンファーストのような自国中心主義が台頭し、弱者である他国民を排除する傾向が強まっている。イギリスはEU離脱を決め、フランスでも極右勢力が伸びた。彼らは難民や移民の受け入れに抵抗し、テロ…

過去のメディア論から認知の社会的変化を考える

マクルーハン以来80年経過した 過去のメディア論 ところが研究対象のメディアの変容が早いので、誰もそれを適切に評価しえないうちに 時代が動いてしまっている。 いつの間にか本流になったSNSは短いコメント(イイねボタンやエモティコン)と写真、それにク…

電気自動車と自動運転技術の相克

ガソリンやディーゼルエンジンなど内燃機関からモーターへと自動車の次世代シフトが始まっている。水素に頼る燃料電池自動車はしばらくお預けであろう。また、ハイブリッド(内燃機関と二次電池)も主流にはなりそうでなれない。 尚かつ、自動運転技術がAIと…

ゾウリムシのイコノロジー

生物学の授業でおなじみのゾウリムシ( Paramecium caudatum )は顕微鏡が発明された時代から人類とのおつきあいが続いている。 でありながら専用のブログも見かけない。研究対象としては大腸菌に見劣りするのは事実だし、ユーグレナのように儲けることもで…

日本三大深湾 湾の三兄弟

日本の中央部に位置する富山湾、駿河湾、相模湾は「日本三大深湾」である。 いずれも湾内において急峻な峡谷が海底まで続いており、一挙に1000メートルも降る。 富山湾は富山海底谷と呼ばれ1000キロにおよぶ峡谷を形成している。 駿河湾も同様に急速…

ありえない出来事 in 21世紀とベイズ主義

アメリカ同時多発テロ事件のように誰も予想もしなかった事件から21世紀は始まった。立て続けに100年に一度どころではなく1000年に一度、そして、サブプライム破綻のように「一万年に一度」のような出来事が21世紀になって生じた。2001年 アメリカ同時多発テ…

トランプ政権がもたらす科学研究中心の西漸(せいざん)?

2017年7月号の日経サイエンスの論文『変わる世界の勢力図』を読んで思い出したのが、4年前の自分のブログ記事「科学業績の中心国の歴史地理的移動の傾向」だ。 まず、キッカケとなった7月号の論文をかんたんに要約しよう。トランプ大統領の発言や政策に従え…

世界の文字の系統樹と科学研究の関係

世界の言語は6000とも7000とも云われる。しかしながら、文字の種類は100にも満たない。 つまりは、自前の言語に合わせた文字をもつ民族?あるいは言語集団というのは少ない。 主要な文字圏は8つに分かたれる。 ラテン文字圏。これには欧米の大半…

さよなら、グレート・バリア・リーフ

つい先月もグレートバリアリーフ(Great Barrier Reef)の白化現象が壊滅的なダメージをこの世界最大のサンゴ礁に与えているというNewsが出ていた(AFP「豪グレートバリアリーフの白化、想定より深刻 専門家が警告」5月29日) これまで毎年のようにオース…

古代の植物学者 テオプラストスについて

ギリシア古代科学の偉人の一人、テオプラストス(Theophrastus)のことを語っておこう。アリストテレスの後継者にして同僚であったテオプラストスはレスボス島生まれ。父親は裕福な洗濯業者であったという。 師の跡を継いだ彼はリュケイオン(ペリパトス学派)…

(書きかけ)可能世界論と一般相対論的宇宙論の違いは何か

三浦俊彦の「可能世界論」は刺激的な良著であるのは間違いない。様相論理学の拡大解釈によるスペキュレーションである。ある命題Pが必然的ある、可能的である。それを世界wで命題Pが成り立つと考え、「必然的真理をあらゆる可能な世界における真理、可能的…

自然科学における加上の原則

江戸時代の大阪町人の生んだ天才、富永仲基の大乗非仏説。その方法論が”加上の原則”の説であります。 富永仲基の簡勁にして雄渾な解説は内藤湖南先生の論評『大阪の町人學者富永仲基』を参照いただこう。 三つの原則をたてて教相判釈の非合理性を批判した。…

中国の森林の歴史

2016年に中国の森林面積の増加が世界各国中で首位であったと報じられた。『中国、過去5年の森林面積純増量“世界最多”』 国連食糧農業機関(FAO)が発表した報告書「世界森林資源評価2015」で、2010〜15年間での純増量でみた比較結果だそうだ。…

『シン・ゴジラ』のラストシーンと『春と修羅』

『シン・ゴジラ』のラストシーンで尾のなかに人体が見えるのが話題となっていた。 その一つの尤度の高い解釈をひねり出して知人に説明したが、反応がイマイチだった。 宮沢賢治の『春と修羅』が行方不明となった牧教授のヨットでツルの折り紙ととも残された …

産業革命は繊維工業に始まるのはなぜか

18世紀後半、イギリスに端を発する「産業革命」の主役は綿工業だ。だが、どうして綿工業なのか、がいつも不思議でならなかった。ニューコメンの蒸気機関、飛び梭の発明、ダービー父子のコークス製鉄法、アークライトの紡績機、ワットの蒸気機関、ミュール紡…

起源を追求する科学のオリジン

宇宙の起源はビッグバンで、質量の起源はヒッグス粒子だという。4つの力(相互作用)の起源は宇宙の起源と同時に語られることが多い。太陽系の起源はシミュレーションが解き明かしつつあるようだ。地球の起源も太陽系生成論(京都モデル)で並列的に説明さ…

市場経済の解毒剤としての資本論

「商品交換は、共同体の終わるところで、すなわち、共同体が、他の共同体または他の共同体の成員と接触する点に、始まる」『資本論』 マルクスの有名なメッセージであるけれど、これを現代的な視座で統一的に理論化したのは宇野弘蔵とカール・ポランニーだと…

森林生態学者と中国天童山

中国大陸での緑の回復に最も貢献している人物の一人である宮脇昭は、近年になって、ますます、森林破壊の行着く先の人類の未来について、憂慮の念を深くしている模樣だ。 それはともかく、この優れた森林生態学者は上海市の奥地にある天童山を訪れている。自…

自然人類学 始祖人類の年代的傾向

自然人類学での人類の出現に関する発見は、21世紀になっても塗り替えられてばかりのようであります。 サヘラントロプス・チャデンシスのような700万年前まで始祖が遡ってしまっている。この下を噛みそうな名前のお骨はしっかり頭蓋骨が残っている。チンパン…

デボン紀の巨大キノコ

アフガニスタンにUSAが最強爆弾を投下した。核爆弾のようなキノコ雲が出現したというニュースが昨日、流れた。通称「MOAB(モアブ)」、つまり、大規模爆風爆弾(GBU-43/B Massive Ordnance Air Blast)という9mクラスの大型爆弾なのだそうだ。 もっと平和…

島嶼化と軽自動車

21世紀になって発見された現生人類の兄弟分ホモ・フローレシエンシスはホビットという愛称がついた。大人でも150センチに満たない。彼らはほんの12000年前まではフローレンス島というインドネシア諸島の小島に生きていた。 これを島嶼化という。生物資源が限…

マグネシウム電池開発

充放電できる二次電池ではないけれど、新しいタイプの一次電池として「マグネシウム電池」が脚光を浴びている。イオン化傾向の乖離が大きいものを正極と負極に選ぶのが原則である。 金属のイオン化傾向はリチウムを筆頭に金までが並んでいる。イオン化傾向を…

Googleとボルヘス的幻想

Google Mapの考案者/開発者はニール・スティーヴンスンのサイバーパンクSFにinspireされたそうだが、そのまた根底にボルヘスの『アレフ』があるという。 その一部を引用しておこうか。主人公にとってはた迷惑な詩人がある日、泣きつくとこでアレフがつぶやか…

社会的な過剰な反応と『シン・ゴジラ』

1996年3月のイギリスの狂牛病(BSE)騒動は社会的な過剰な反応の代表例とされる。そのヒトの脳への感染の結果としてCreutzfeldt-Jakob disease (CJD)=クロイツフェルト・ヤコブ病を引き起こす。 クロイツフェルト・ヤコブ病は精神症状と高次機能障害を誘発…

ハイエイタス  hiatus

地球温暖化は2000年から2012年の間、伸び率が停滞した。これをハイエイタス( hiatus )と呼ぶ。「中断」というほどの意味だ。 その要因の一端は明かにされているいると思える(例 『地球温暖化の停滞現象(ハイエイタス)の要因究明』)。 海洋の深層部が熱…

人類が観察したる種の起源

20世紀において進化論は科学的な定説として揺るぎない権威を持つに至った。幾つかの反論があったがどれもこれも末節の議論となった感がある。 だが、進化の駆動仮説であるニッチをめぐる争いの結果としての適者生存=自然選択説はかなり大きな変更を受けたよ…

男が先か女が先か

ここはつまり、言語を使いだしたのは男が先か女が先か、という擬似問題を考えてみたい。「擬似問題」というのは正解がないどころか、問う行為もそれほど思慮深いことではないことを示唆している。 話し言葉に限定するのはもちろんだ。書き言葉が先にあったと…

白金や金銀でもないのに価格の高い元素

あまり知名度が高くないその元素はパラジウム(Pd)元素番号46番でありましょう。白金や金には負けてるが、銀よりも高い。ジュエリーにも利用されていますが、一般市民的には義歯の合金として利用される。 高貴さという点で似ているギリシャ神話の女神パラ…

2012年夏の北極のハリケーン

2012年8月に北極で発生した「Arctic Storm」は、三千キロの範囲におよび北極圏を覆い尽くした。地球温暖化を危惧する多くの気象学者を不安がらせた。 学術的な名前は「北極低気圧」だが、その脅威を十分に体現したネーミングではないようだ。 NASAのサイトを…