「慣習的な言い方によれば、色があり、甘さがあり、にがさがある。しかし真実には原子と空虚があるのみ……」(斎藤忍随訳) 「あわれな心よ、おまえは我々から確信を得ておきながら、その我々(諸感覚)を打ち倒すのかね。我々の打倒はお前の転倒なのだ」(内…
類は友を呼ぶの好例。寺田寅彦もダーシー・トムソンを「いいね!」していた。 www.aozora.gr.jp ただ生物界の現象を説明するに力学を応用するようになった率先者の一人としてここに御紹介するその学者の名はダルシー・ウェントウォース・トムソンという。こ…
アルビン・ロスはゲーム理論の応用で2012年ノーベル経済学賞を受けた。その代表的で社会貢献的な業績はマッチメイキングのアルゴリズムで腎臓移植を促進させたことだ。 ja.wikipedia.org 臓器提供者(ドナー)と患者の間での腎臓移植をスムーズに行うには、…
このところ2週間に一度くらいで火球のニュースが流れる。それも国内での目撃なのだ。その軌跡情報から落下場所を推測して隕石のかけらを民家の屋根から発見なんてこともあった。おそらくは他国でも同様であろう。 その増加の主要因は、スマホや定点監視カメ…
サミュエル・バトラーは「ニワトリは卵が進化するための手段である」とダーウィンの進化論を皮肉った。バトラーの発想はユニークだし、そうした観点の逆転はしばしば科学の進歩にもつながっているという前提で、以下の議論を味わっていただきたい。 ウイルス…
三種類の統計学史というのは、北川敏男と竹内啓、それに宮川公男のものであります。 それぞれに扱う対象は微妙に異なります。 北川敏男のものは欧米を中心とした統計学の発展を主としているし、竹内啓はもう少し幅が広く、統計の対象となる社会的な集計行為…
先日、ケネディ&チャーチルの『ヴォイニッチ写本の謎』を読み直した。 著者たちは普通の作家たち(それにしても凄い組み合せの名前)だ。BBCの特別番組の書籍化したものなので特別な偏向はない。つまり、この謎の手稿に対して、古代の叡智だの、秘密結社の…
ロシアのウクライナ侵攻の背景にはプーチン政権のエネルギー覇権をめぐる戦略があった。 プーチンの権力維持の軸は、エネルギー資源のシェア拡大と暴力的な威圧による脅威の除去だった。これらを効果的に組み合わせて専制体制を維持してきた。 西側の経済制…
コンピュータや旋盤、車両などの機械は、振動もしくは回転がその心臓部である。 たとえば、デジタル化した機械は必ずクロックを刻みつつ作動する。 これにはなんの不思議もない。 機械の重要な中継点は歯車式時計であろう。その脱進機こそは時の刻みだった。…
「あなたは私のことを分かってくれない」と夫婦喧嘩で女性から指摘される男性は多いことであろう。 そうでなくとも、「おまえは俺を理解していない」と詰め寄る友人との仲たがいや「クライアントの都合を把握していないで企画をつくるな」というビジネス・バ…
本日、2022年8月14日に茨城県守山市で大型物流センターが火災となった。それをきっかけにツラツラと推測をまとめてみた。 個人的に気になるのだが、最新の防火設備を備えているはずの物流センターが延焼する事件は年に一回は起きているように思える。 2017…
マルクスは『歴史は繰り返す。最初は悲劇だが、二番目はバロディとして』といった。これはフランス史でのナポレオン三世の台頭についての政治的発言だ。 日本の漫画『ルパン三世』については至言であろうが、今次のコロナについて当たっているわけでもないだ…
見回せば、いたるところ青山ならぬ、多種多様で高品質なコンテンツありのデジタルワールドに我らは暮らしている。 かつてクリストファー・プリーストの『限りない夏』なる好短編は青春のピーク体験を永遠化するテーマを扱っていた。時間をくりぬき、至福の瞬…
はじめに月都ハランに触れた記述はJ.D.バナールの『人間の拡張』の1972年版の翻訳であった。もとは「賢者」バナールの物理学史講義だ。 そこにはこう記されている。 ここでいいたいのは、タレスは少なくとも過去200年にさかのぼる非常に長期間に日食表にもと…
ジョン・スタインベックの名作『怒りの葡萄』でオーキーと呼ばれる農業からあぶれた失業者たちが職を求めてさまよう。そんな時代に起きた大平原地帯の干ばつと不毛化という危機はどう回避されたか、その問いは、自分的にはしばらく答えのないままであった。 …
何ゆえか、数学者には禿げを見かけることは少ない。偉大な数学者にはいない。 それを偉大な数学者の画像で確認しよう。 やはり信頼できる肖像画や写真が残る近代以降に限られる。 天才の世紀ともいわれた17世紀、デカルトとパスカルから始めよう。 デカルト…
精神疾患のような原因が特定困難な病は社会の好ましからざる変化や要因が影響している可能性が高い。 とくに世界的に増加傾向にあるうつ病。この原因はいまだに特定できていない。 そもそも、一つの病であるとすることもなかなかに難しいようだ。 腫瘍マーカ…
根源語の魔術師ハイデッガー「技術とは何か」を読んだ覚書が以下となります。 技術ではなく、技術の本質をつかむこと。両者は異なると哲学者は初めに断りを入れる。まずは、古代ギリシアの4原因説のおさらい。 質量因 どのような素材からつくられているか …
存在論について早くから緻密な思考をめぐらしていた古代インド人は無をカテゴリ論の一部として扱う。それを行ったのは後代のヴァイシェーシカ学派だという。無を非存在と同義として、この学派は無を4種にわけた。 未生無、乙滅無、畢竟無、交互無 未生無は…
痴性体の知能の様態の奇態な様々を類推し推測する。 1.脳のなかに脳があって、その中に脳があって、それが繰り返す(ロイス型) 2.空洞の脳室。そこでの音響共鳴が外部刺激に対しての応答を決める(空洞型) 3.多数の寄生体の寄り合いが神経系に組み込…
ここでの日本人生物学者たちとは木村資生と渡辺格である。 木村資生から始めよう。彼の分子進化の中立説はノーベル賞級の発想と発見であった。その業績の先進性は高く評価されるべきだろう。 もう一人、分子生物学の渡辺格である。ウイルスの遺伝特性を解明…
最近になってアメリカで話題となっているUS空軍のUFOドキュメントに刺激されて、この未知の物体の運動性能を可能にする未知のテクノロジーについて、流行りのSFプロトタイピングを試みよう。 UFOが光学的な錯覚ではなく、実体があるというのが前提である。そ…
宇宙において連星はかなり普通の状態らしい。注意点はいずれも恒星でなければ連星と呼べないこと。ガミラスとイスカンダルは連星ではない。 あの北極星は3重星で、リゲルやレグルスは二重星なのだそうだ。夜空の約半数の星は連星なのだそうである。 中国SFで…
諏訪湖は地元の人びとが語るように「日本のヘソ」、つまり、中心点だ。 なぜなら、中央構造線と糸魚川-静岡構造線(ファオッサマグナ)の交差上に位置しているからだ。 思い起こすのはギリシアのデルフォイだ。そこにはアポロンの神殿があって、古代ギリシ…
そこは黙示的戦区であった これが忘れかけていた珠玉のSF名編の始まりの文。なるほど時間もののSFは映画やアニメなどあらゆるコンテンツに登場するようになった。『君の名は。』のようなロマンチックな名編もいいだろう。 けれど、この『旅人の憩い』のよう…
今から70年前というと20世紀の真ん中あたりだが、そのころ日本でも公害とか大気汚染などがマスメディアを賑わすようになっていた。四日市ぜんそくとか、水俣病とかのホットだった年代だ。 実は原因すら工場の排気ガスや廃水にあるとは確定されていなかった。…
先進国、とくにアメリカの停滞が典型的なのだが、その科学技術の現状は嘆かわしいという往年のハードSFファンは多い。自分が真っ先にそうだ。 だいたい、AIや量子コンピュータやら5Gなど情報通信技術がやたらにもてはやされるのが疎ましい。しょせんは電子…
あまり人気のない問い。それはAIが人間に理解可能か、あるいは人間のように考えることができるのか、という問いだ。もちろんチューリングテストなる一つの合格基準がある。 だが、サールの中国人の部屋のような問いかけにはチューリングテストは十分とはいえ…
アメリカと中国と2021年人口が公表されている。両方とも歴史的な数字となった。 昨年7月の数値でアメリカの人口増加率は0.1%だったというのがJETROの記事だ。 www.jetro.go.jp 過去最低の数字という文章が躍る。 一方、アメリカをどんどん追い上げていくはず…
アメリカのSF作家ケン・リュウなどの活躍によって、中国SFは一挙に紹介された。そして、近年に一斉に開花した中国のSFは終焉を迎えている。2022年の年初の予想である。 どうして、そうなるかを説明しよう。 もちろん、わが国でも昨年に劉慈欣の『三体』の邦…